3970人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、比呂」
「んー?」
俺は二つ目のそぼろを食べ終え、一緒に買って来たお茶を飲んだ。
「別れても、いい仕事仲間に戻れるね」
ゴクン、とお茶が音を立てて喉を流れた。
「別れたいのか?」
「比呂が離婚するまで、ってルールでしょう?」
平然と別れを口にする千尋の顔を見ていなくて良かった。違う。俺の、顔を見られていなくて良かった。
きっと、酷い顔をしている。
「離婚が成立したら、自由だよ」
聞きたくない。
千尋の口から別れの言葉なんて、聞きたくない。
「妻からも愛人からも自由に――」
「結婚しよう」
背中合わせでよかった。
きっと、泣きそうな顔をしている。
俺が。
「千尋を、愛してる」
震える声で、けれど、ハッキリと言った。
「結婚したい」
「比呂のこと、好きよ」
最初のコメントを投稿しよう!