3.コンビ解散

2/11
前へ
/365ページ
次へ
 幼く可愛い見た目に反して、性格ははっきり、きっぱりしている。『カフェ・りらっくす』とは、高井さんがオーナーを務めるチェーン店で、札幌市内に五店舗を構えている。今回の依頼は、六店舗目の出店に関してだった。 「明日の打ち合わせと視察を終えれば、書類作成で終了ですし。お願いします」 「でも、高井さんが了承するか――」 「麻衣ちゃんがフォローで入っておけば、問題ないんじゃないかな?」  所長がディスプレイから顔を覗かせて、言った。 「わかりました」  所長が、無理のあるウインクを投げてきた。  両目瞑っちゃってますけど……。  麻衣さんが高井さんに誘いを受けていることは、所長に報告してあった。麻衣さんが俺のせいで、高井さんと食事に行くことになったことも。 『麻衣ちゃんも大人なんだから』と所長は言ったけれど、俺が子供(ガキ)くさい嫉妬をしなければ、麻衣さんが高井さんとの食事をOKすることはなかったはずだ。  勝手にしょげている俺に、所長は言った。 『そろそろ麻衣ちゃん離れした方が良さそうだね』  麻衣さんの隣は居心地が良くて、楽しい。  けれど、いつまでもこのままではいられない。  最初は、所内で夫婦コンビみたいに弄られるのに、乗っかっていただけだった。ワイワイ楽しいのは好きだし、麻衣さんがムキになって怒るのも面白かった。  彼女が七歳も年上だと聞いた時には、本当にびっくりした。  幼く可愛い見た目に反して、性格ははっきり、きっぱりしている。
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6580人が本棚に入れています
本棚に追加