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幼く可愛い見た目に反して、性格ははっきり、きっぱりしている。『カフェ・りらっくす』とは、高井さんがオーナーを務めるチェーン店で、札幌市内に五店舗を構えている。今回の依頼は、六店舗目の出店に関してだった。
「明日の打ち合わせと視察を終えれば、書類作成で終了ですし。お願いします」
「でも、高井さんが了承するか――」
「麻衣ちゃんがフォローで入っておけば、問題ないんじゃないかな?」
所長がディスプレイから顔を覗かせて、言った。
「わかりました」
所長が、無理のあるウインクを投げてきた。
両目瞑っちゃってますけど……。
麻衣さんが高井さんに誘いを受けていることは、所長に報告してあった。麻衣さんが俺のせいで、高井さんと食事に行くことになったことも。
『麻衣ちゃんも大人なんだから』と所長は言ったけれど、俺が子供くさい嫉妬をしなければ、麻衣さんが高井さんとの食事をOKすることはなかったはずだ。
勝手にしょげている俺に、所長は言った。
『そろそろ麻衣ちゃん離れした方が良さそうだね』
麻衣さんの隣は居心地が良くて、楽しい。
けれど、いつまでもこのままではいられない。
最初は、所内で夫婦コンビみたいに弄られるのに、乗っかっていただけだった。ワイワイ楽しいのは好きだし、麻衣さんがムキになって怒るのも面白かった。
彼女が七歳も年上だと聞いた時には、本当にびっくりした。
幼く可愛い見た目に反して、性格ははっきり、きっぱりしている。
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