3.コンビ解散

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「結婚相談所!?」  明子さんの声に、ざわついた部屋が静まり返った。  隣に座っていた麻衣さんが唇の前で人差し指を立てて、シーッと言ったけれど、遅かった。 「麻衣ちゃん、婚活するの!?」  俺と仕事の話をしていた仁美さんが、即座に反応した。 「あ、いえ――」 「仕事に不満があるのかい? 言ってくれたら――」と、楠所長が心配そうに言う。 「そうじゃないんです!」  麻衣さんが慌てて否定する。 「仕事に不満なんてありません。ただ、どんな感じか……なぁ……なんて……?」 「失礼します!」  元気な声がして、部屋の扉がスライドした。大学生らしい若者が入って来る。 「生四つと、カシスサワー、レモンサワーお持ちしました」  みんなが手元のジョッキやグラスを飲み干し、冷えたものと交換する。 「串アラカルトとオニオンリングです」  若者の背後から、これまた大学生らしい女性店員が顔を覗かせた。入り口のすぐそばに座っていた俺は立ち上がり、彼女から料理の皿を受け取った。 「ありがとうございます」  お礼を言われた時、じっと見られた気がした。 「ごゆっくりどーぞ」  来た時同様、トレイいっぱいに空のジョッキを載せて、若者が扉を閉めた。  明子さんが揚げたてのオニオンリングを、自分の皿に取る。 「――で?」と、仁美さんがジョッキ片手に麻衣さんを見た。 「はい?」  カシスサワーのグラスに口をつけようとした麻衣さんが、一旦飲むのをやめる。 「結婚相談所! 登録するの!?」 「まだ決めてないです」 「結婚したら、仕事辞めるのかい?」と、小野寺さんが口に泡をつけて聞いた。  おしぼりで口を拭う。 「え? あ、どうでしょう?」と、麻衣さんが苦笑いする。  俺は、言葉がなかった。出なかった。  麻衣さんが結婚したいと思っていることは知っていたけれど、まさか本格的な婚活を始めるつもりだったとは。 「麻衣ちゃんが辞めたら、寂しいなぁ」と、所長が肩を落とす。 「いえ、所長! 婚活したからって、すぐに相手が見つかるとは限らないですから」
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