3.コンビ解散

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「麻衣ちゃんなら、すーぐ見つかるでしょ」と、仁美さん。 「そうそう。私が嫁に欲しいくらいだもの」と言って、明子さんが麻衣さんに抱きついた。 「癒されるし、料理上手だし。何と言っても、この抱き心地の良さ!」  明子さんはかなりの酒豪。  俺たちが三杯目なのに対し、明子さんはその倍は飲んでいる。  顔には全く現れないけれど、こういうテンションになってきたら、酔っている証拠。 「明子さん。鶴本くんが羨ましそうに睨んでますよ」 「ん?」 「え?」  完全にノーマークで串を頬張っていた俺は、反応に困った。 「俺の麻衣ちゃんに触るな、だって」 「え? 言ってないですよ!」 「言わなくても、顔に書いてあるわよ」 「鶴本くんに麻衣ちゃんは、十年早い! 男を磨いて出直してこい」と言って、明子さんが一気飲みさながらにジョッキを持ち上げる。 「麻衣ちゃん、結婚てそんなにいいもんじゃないよ!?」  明子さんはバツイチ。  俺が就職する前には離婚していて、高校生の息子と二人暮らし。離婚の原因は知らないけれど、結婚はもう懲り懲りらしい。 「私も婚活、しようかなぁ……」  仁美さんがお通しの枝豆を指で弾きながら言った。 「麻衣ちゃん、一緒に登録しよっか」 「え!?」 「ええっ!?」  麻衣さん以上に反応したのは、小野寺さん。  小野寺さんもバツイチで、娘が二人いると聞いた。副所長で給料もいいのに、養育費を渡しているから楽じゃないと、いつかの飲み会で話していた。 「そんなに驚くことですか? 私だって、まだ諦めてませんよ? 結婚」  仁美さんの挑戦的な物言いに、驚いた。  気まずそうに肩をすくめる小野寺さん。 「トイレ、行ってきます!」と、仁美さんが投げやりに言い残して立ち上がった。  今の会話のどこに、苛立つ要素があったかがわからない。  仁美さんを心配そうに見つめる麻衣さんと、目が合った。明子さんは麻衣さんの腕に自分の腕を絡めたまま。 「僕もトイレに……」  小野寺さんが徐に立ち上がり、けれどそそくさと部屋を出て行った。 「鶴本くんは知らなかった?」  所長が僅かに残ったラーメンサラダの皿を差し出し、俺は受け取った。 「付き合ってるんだよ、あの二人」
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