3.コンビ解散

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3.コンビ解散

「大丈夫だと思いますよ」  少し意外だった。  麻衣さんには褒められることよりも、ダメ出しされることの方が多いから、独り立ちなんてまだ早いと言われると思っていた。 「全ての業務の研修は終えていますし、問題ないです」 『もういらない』と言われたような気がした。  入所から、オールラウンダーになるように言われていたから、麻衣さんの指示の下ではあっても、他の業務もこなせるように勉強してきた。  だから、研修期間が長かった。 「とりあえず、麻衣ちゃんの案件をシフトさせて、徐々にみんなの案件にも携わってもらおうか」と、楠所長が言った。 「わかりました」 「じゃあ、鶴亀コンビ解散ですか?」と、明子さんが聞いた。 「お似合いだったのにぃ」 「いつまでも尻に敷かれっぱなしじゃ、鶴本くんの立場がないからね」と、所長。 「それに、麻衣ちゃんが産休に入ったら、鶴本くんが全業務を引き継ぐんだし」 「産休!? 麻衣ちゃん、子供が出来たの?」と、仁美さん。 「出来てません!」と、麻衣さんが全力で否定する。 「そうなる前に、鶴本くんにはピンで動けるようになってもらおうってことだよ」と、小野寺さん。 「もうっ! コンビとかピンとかやめてください!!」  三年もこのネタで弄られているのに、麻衣さんは慣れない。 「そういうわけだから、まだデキ婚はダメだよ、鶴本くん」 「はい!?」 「一人前になるまでは、麻衣ちゃんを孕ませちゃダメだからね」 「所長! セクハラです」 「うん。今のは一発レッドですよ」と、明子さんが麻衣さんに加勢する。 「聞かなかったことにして?」と、所長がお茶目に首を傾げる。 「可愛く言ってもダメです。ペナルティとして、鶴本くんの研修終了祝いの飲み会は所長の奢りで」 「えっ!? マジで!?」 「マジで」 「明子さんは厳しいなぁ……」  所内が笑いに包まれ、麻衣さんが俺の隣に戻ってきた。 「麻衣さん、お願いがあるんですけど」 「なに?」 「カフェ・りらっくすを任せてもらえませんか?」
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