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5.濡れない身体
「で? 本当のところはどうなんですか?」
長いキスの後、鶴本くんが聞いた。
「なにが?」
「不感症って全く感じないってこと?」
「それ、また今度にしない?」
休日の朝の話題として、どうかと思う。今更だけど。
「私、顔洗って――」
鶴本くんの足の間から抜け出そうと、私は向きを変えた。
けれど、鶴本くんが立てていた膝を伸ばし、私が逃げられないように交差した。
「ここまで話したんだから、ちゃんと話しましょうよ」
「けどっ、朝からする話じゃ――」
「今更でしょ」
ですよね……。
「こっちもしばらく収まらなそうなんで、話しちゃってください」
足だけでなく、腕も私に絡みつく。
鶴本くんの、硬くなったままのモノが腰に当たる。
「なら、離れた方が良くない?」
「どうせ話聞いてたらまた勃つんだから、このままで」
「けど……」
気になるなんてもんじゃない。
「で? 不感症って具体的には?」
話さなければ、放してくれそうにない。
鶴本くんの顔を見ながら話すより、こうして背を向けている今のうちに話してしまった方がいいのかもしれない。
「……ないの……」と、私は自分で自分の声が聞こえないほど、小さな声で呟いた。
もちろん、鶴本くんに聞こえるはずはない。
「え?」
「濡れ……ないの……」
「……」
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