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アキの顔を正面から見る。いつもは暗闇だけの顔に、一瞬青年のそれが見えた。
「君はアキだよ」
例え、少しぐらい違ったとしても。
「君は、俺の友達だよ」
アキが俯く。涙も出ないくせして、泣いているのかもしれない。
(お前がそう言ってくれるのなら、オレはアキだ。お前の友達だ)
俺は笑う。嬉しくて笑う。
アキが帰ってきてくれた。
(さて、と)
アキは立ち上がる。
(あのオンナはどうすんだ?)
「え?」
(アヤだよ)
今度は俺が俯く。
(少し聞いていたが、お前を守ろうとしてやったんだろ?)
「そうだけど」
(あいつは変な奴扱いされるのを承知で、お前に声をかけて来たんだろう? 良いのか、このままで)
俺は返事をしない。どうしたら良いのかは分からないが、このままで良いなんて思っていない。
アキを連れて、大学へと向かった。アヤと受けようと言っていた講義があった。
教室に入ると、窓際の一番後ろの席に、アヤが一人でポツンと座っていた。
アヤの元へ行こうとすると、緑川さんが話しかけてきた。
「吉成くんじゃん、この授業受けてたんだ」
「う、うん」
(どけ、キノコ性悪女子)
「あ、そういや、昼間大変だったね。見たよ、またタカトウアヤに塩かけられてたっしょ?」
「ああ」
(かけられたのはオレだ)
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