アキ

1/2
前へ
/18ページ
次へ

アキ

「ここ、空いてますか?」 「へ、はい」  隣りに座るその人を、俺は食いいるように見ていた。おっとりとした顔つきに、黒く長い髪の毛。  女 子 だ!  マジか! 女子が隣に座ったぞ! しかもそこそこ可愛い。 (マジか、リア充かもじゃん)  茶化すアキを無視して、配られたシラバスを開きつつ、隣の彼女を横目で見ていた。  話してみたい。 「あのっ」 「はいっ、新入生の皆さん、こんにちは」  声をかけようとした時、説明会が始まってしまった。  くそー、タイミング悪い。  諦め、シャーペンを手に持った。 「何? 今、何か言った?」  彼女の方から、声をかけて来た! 「あ、うん。言った」 (お、行くのか、行くのかー? 頑張れ童貞ハル)  うるさい!  心の中でアキに言い返し、彼女には笑顔を向けた。彼女は俺を見ていなかった。俺の隣の席を見ていた。  隣には、アキが座っていた。 「私は高遠亜夜(たかとうあや)って言うんだけど、キミ、名前何て言うの?」  目線はアキに向けたまま、おそらく俺に名前を聞いてきた。 「よ、吉成遥(よしなりはるか)」 「吉成くんね、この後時間あるかな?」 (おい、ハル)  アキが俺の肩をたたく。     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加