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さんにん
(よっ)
意気消沈してアパートに帰ると、アキがソファに座っていた。
「は?」
(遅かったなぁ、あの後大丈夫だったか)
「あ、アキなのか」
(そうだよ、どうしたんだよ)
「いや」
アキをじ、と見る。
「いつもと、少し違う、気がする」
顔の見えないアキが、笑った気がした。
(そうか。お前にはわかるんだな)
アキはテーブルの向かいを指差す。そこに座れということだ。俺が座ると、彼もソファからテーブルの前に座った。
(オレは一人ではない)
「え?」
(オレは言わば、その辺に散らばっている、そのままにすれば消えてしまうような、思考のあり合わせ。幼い頃のお前が創った、思念の集合体だ)
「シネン? シュウゴウタイ?」
(それをお前ら生きてる人間が、お化けだとか幽霊とか呼ぶのならそれかもな。とにかく、前のオレはアヤの塩のせいで殆ど消えた。今は、また違う思念体で形成されてる)
「君は、アキではないの」
(そうとも言えるし、そうでないとも言える。オレはお前の作り出した『アキ』という意思の記憶を受け継いでいる。お前が、オレをアキでないと言うなら、オレはもうアキではない)
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