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それはたしかに恐ろしい。
けれど、多くの人は、きっと、こう思っている。
だけど自分はだいじょうぶだろう。
そう、なんの根拠もなく、本気で考えているのだ。
そして、小鳥遊エリカも、そんな人間の一人だった。
連続殺人鬼。
おそろしくはある。
おそろしくはあるが……エリカにだって、色々考えなければいけない問題が山ほどある。
宿題だってそうだし、今晩の夕食のことも。
それになにより、寝ているときに右眼に映る、あの映像だ。
結局のところ、なんの力もない一般人が、殺人鬼のことをあれこれ考えたところで無駄なのだ。
どんなにおびえても、どんなに警戒しても、殺されるときは殺されるだろうし、なにもしなくても、無事なときは無事だろう。
そーゆーものだ、人生とは。
あとはだから警察にすべてを委ねるほか、ない。
おそらくは多くの人がいたるだろう考えにエリカもいたり、立ち去ろうとした。
「あれは……」
けれどそのとき、意外な人物を目にし、そちらへと近づいた。
「兄さん、なにをされているのです?」
美大に通うエリカの兄、小鳥遊直人だ。
ぼさぼさの髪。よれよれのジーパンに絵具で汚れた白いTシャツというラフな恰好。
「エリカ?
ああ、ちょっとこの先の公園でね、絵を描いていた」
言いながら、画材が入れられているのだろうバッグを掲げて見せる。
「学校帰りか? なら、一緒に帰るか」
「ええ」
ならんで歩きだす。
「兄さん、相談したいことがあるのですが……」
歩きながらそう、エリカは切り出した。
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