一章

7/16
前へ
/140ページ
次へ
「相談?  お前が相談なんて珍しいなぁ。  なんだ?」 「あ、いえ、帰ってからでいいのですが」 「そっか」  小鳥遊は急なエリカの言葉に驚き、気にはなっていたようでしばらくそわそわしていたが、それ以上、この場で追及してくることはなかった。  進む。  じょじょに人気が少なくなってゆく。  そんなとき、前方から陰鬱な表情の一団が歩いてくる。  エリカたちはそのまま通り過ぎようとしたが、 「あの……」  そのうちの一人に呼び止められ、足を止める。 「はい。なんでしょう?」  三、四十代ぐらいの女性だった。  バリバリのキャリアウーマン、という風には見えないし、あまり身だしなみに気を使っているようにも思えないから、主婦、だろうか。  彼女以外にも三人の人間がいたが、誰もかれもみな、暗い表情。  特徴的なのは、彼女たちの手にある大量のビラだ。  女性はビラを一枚、小鳥遊にさしだしてきて、 「この子を、見かけませんでしたでしょうか」  と、酷く陰気な声と表情でたずねてくる。  小鳥遊とエリカはビラに視線を落とす。  女の子の写真が印刷されていた。  小学四年生の十歳ということだ。  左目の泣きボクロが特徴的な、愛らしい少女。  大人になったらさぞかし美人さんに成長することだろう。  探しています!  写真の下に、大きくそんな文字が躍っている。 「行方不明なんです、もう、三日も、姿が見えなくて……ケータイを持たせていたのですが、連絡も取れなくて……」  小鳥遊は首をふった。 「すいません……見覚えはないですね」  言いながら、エリカに目で問いかけてくる。  エリカも首をふり、 「もうしわけないのですが、私もお見かけしたことはありません」
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加