第四章 殺し合うことは

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「万が一の時の、逃走経路は?」 「市内ならどこに逃げてもOKだから、もし防衛線を破られた時は、公園に移動しようかと思ってる」  最初の頃。被害弁済決闘は、一つの限定されたエリア内で行なわれていた。エリア外に出たら、一般市民が危険だからだ。しかし当事者たちは命が懸かっている。ルールで縛っても、追いつめられると外に逃げ出すのだ。それは加害者も、決闘を申し込んだ被害者遺族も、同じことだった。  どうせ逃げ出すならと、ある程度の範囲内なら逃げてもOKというルールに変更された。パニックになって場外乱闘になるより、そのほうが安全だからだ。また、生の戦闘が市街地で繰り広げられて、無理矢理にでも一般市民の感心を引きつける、という犯罪抑止のショック療法もあった。 「公園だと遮蔽物がないから、守りにくいよ」 「じゃあ、どうするんだ?」 「駅前の大型ショッピングモールがいいと思う。中は迷路だ。追うほうは探しにくいはずだよ。出入り口もたくさんあるし、追手をまきやすい」 「……分かった。そうしよう」
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