第一章 自我を持った

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 その日。堂島君香(どうじまきみか)は、いつもと同じく。  放課後、生徒会の雑事を終えて、帰宅途中だった。  時刻は午後6時30分頃。水曜日の夕刻だった。  電動アシスト自転車で、通学路の歩道を走る。  厳密に言うと、道路交通法上、自転車は車両になるので、車道を走らなければならない。しかしこの道は片側二車線の幹線道路で、車の往来が激しい。それに日本の道路は狭く、路肩は原付きスクーターが走る。自転車専用レーンなど一部の道路にしかなく、自転車は歩道にも車道にも居場所がない。  日本の道路行政が行き当たりばったりなための、弊害である。  君香も自転車で歩道を走りながら、日本全国の他の女子高生たちと同じく、スマホを見ていた。同級生からのメールである。  普段は、危ないから自転車に乗っている時は見ない。
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