第一章 自我を持った

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 君香は遺族に謝罪し、葬式にも出席しようとしたが。  遺族側はこれを拒否した。  そして多額の慰謝料請求の、民事裁判を起こした。  しかしまた裁判所は、君香に悪質性がないこと、未成年であることを理由に、遺族側の訴えを退けた。そもそも、高校生の君香に億単位の慰謝料を請求したところで、払えるわけがないのだ。訴訟自体がナンセンス、と切り捨てられた。  遺族側は君香の両親も、保護者責任で訴えたが、これも棄却された。高校生にスマホを買い与えるのは非常識でも何でもないし、自転車に乗りながらスマホを見ることを、禁止する義務もない。ただのマナー違反であり、あるのは道義的な責任だけだ。しかも君香の両親は、ちゃんと謝罪しているし、ある程度の慰謝料なら払う意志も表明していた。  だが、遺族側はあくまで億単位の慰謝料に拘わった。  その意図は明確で、要するに刑事裁判で君香に重罪を与えられなかったから、民事裁判で億単位の負債を負わせて、破滅させてやろう、という魂胆である。
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