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私が、そこまでする義理は無い、そう思ったが
「その人、理世ちゃんと友達になりたいのかも」と言った、富貴子の言葉と
「人様を嫌な目に遭わせちゃ駄目だよ」と言う、花江の言葉を思い出し
「構いませんが、そんな時間、有るんですか?」と聞いた。
すると、千穂は嬉しそうに「休日の午後はどうかしら?午前中は
貴女も、何かと用事が有るでしょうし」と言う。
「でも、どこで?」「私の家に来てくれる?もし、良かったら
この車で、迎えに行くわ」そこまで言われては仕方が無い
「じゃ、宜しくお願いします」とうとう、理世は承諾してしまった。
アパートの前で理世を降ろした千穂は「じゃ、また明日」と言って
帰って行く、ぼーっと見送っている理世に「お帰り、理世ちゃん」
富貴子が、窓から顔を出し「誰に送って貰ったの?」と聞く。
「ほら、いつか言ってたおコン様」「ああ、やっぱり友達になったんだね」
「それがね~」理世は、もう我が家のように、富貴子の家に上がり
事の次第を話し「つい、良いわって言っちゃったんだけど」と言うと
「良いじゃないか、何事も教えて貰えるうちに、覚えた方が得だよ」
富貴子は、お茶を勧め乍らそう言う。
「そうだね、何かの時に役に立つかもしれないね」そう言った後
「あ、そうだ、小母ちゃん、大きなボール貸してくれない?」
「良いけど、何か作るのかい?」「ひき肉を買ったんだけど
うちのボールじゃ小さくて、混ぜられ無いと思うの」
「そんなに買ったのかい?」「うん、一キロ」「一キロ~?」
富貴子は、出していたボールを持ったまま、目を丸くした。
「安かったから、ハンバーグの種や、ピーマンの肉詰めにして
冷凍しようかと思って」「それなら良いけど、一キロなんて吃驚したよ」
そう言った後「ひき肉は、足が速いからね、もう、ここで作って行ったら?
玉ねぎやピーマンも買って来たんだろ?」「ええ、それは構わないけど
小母ちゃんの、夕食は?」「それなんだけど、今日は、明日が賞味期限の
豆腐を食べないといけないんだ、冷ややっこはもう飽きたし
揚げ出し豆腐は、ちょっと面倒だし、どうした物かと、悩んでいたのさ」
「じゃ、麻婆豆腐にしたら?ひき肉は、どっさり有るんだし」
「麻婆豆腐か~良いね、久しぶりでご飯が進みそうだ」
と言う訳で、麻婆豆腐に使うひき肉を除いた、全てのひき肉に
玉ねぎのみじん切りや、玉子、パン粉、調味料などを入れて、よく混ぜ
一袋分のピーマンに詰め、残りを丸くまとめて、ハンバーグの種にし
富貴子がくれた、ジッパー付きの保存袋に入れた。
理世が、汚した道具を洗っている間に、富貴子は手早く麻婆豆腐を作り
「さぁ出来た、一緒に食べよう」そう言って、また二人で夕食を食べる。
「麻婆豆腐、正解だったね」「はい、凄く美味しいです」理世は
遠慮しないで、ご飯のお代わりをした。
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