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理世と祖母
理世は、小さい時から他の人には見えない物が見えていた。
白く透けていて、ゆらゆらと揺れている人の形をした物である。
初めて見た時、祖母にその話をすると、祖母は「お前もか」と、憐れむような眼をし
「この事は、決して他の人に言ってはならないよ、他の人には見えないんだから」
と、きつい口調で言い「お前のお母さんも、見えていたからね~
決して他の人には、知られるなと言っていたのに、お前のお父さんに知られて
気味が悪い女だと言われ、とうとう離婚する事になったんだよ」と、言った。
それで私には、お父さんが居ないのか、理世は小さいながらも、その事を理解し
私は、決して人には言わないわと、決心した。
そのモヤモヤした者は、理世を見ると「おいで、おいで」と、手招きする。
その者が動ける範囲は決まっている様で、ちょっと離れると追って来ない。
少し大きくなってから「あれはいったい何なの?」と祖母の花江に聞くと
「この世に思いを残したまま死んで、成仏出来ない地縛霊たちさ」と、教えてくれた
そして、言葉を交わしたり、傍に行ったら捕まって取り殺される
お前のお母さんも、うっかり声をかけて、心を奪われ、その霊が満足して成仏する時
一緒に連れて行かれたんだと、恐ろしい話をした。
その話を聞いた理世は、モヤモヤした者を見かけると、脱兎のごとく家に走って帰る。
そんな幼少期を過ごした村を離れ、高校を卒業した理世は、隣の市で働く事になった。
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