千穂の家へ

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千穂の家へ

遠慮しない方が、富貴子は喜ぶからだった。 理世は、出来上がったハンバーグと肉詰めピーマンを 半分富貴子にやり、半分を持って帰り、冷凍庫に入れた。 「それな~に?」翔が、冷凍庫を覗き込む。 「ハンバーグと肉詰めピーマンだよ、明日のおかずなの」「ふ~ん」 「今日は、何をしていたの?」「外を見ても良いから、ずっと外を見てたの 色々な人や、車が通って楽しかったよ」「そう、それは良かった」 理世は、そう言いながら、富貴子が昼食の残りだけどと、くれた おからの煮物も冷蔵庫へ仕舞おうとした「それな~に?」また翔が聞く。 「これは、お隣の小母さんがくれた、おからの煮物よ」 「美味しそうだね」「美味しいと思うけど、もう、お腹一杯だから 明日食べるよ」「明日?ちょっとだけ味見をしたら?」 買って来たマグカップや、グラタン皿や、翔の食器を洗っている理世に 翔は、そう勧める、おからの煮物なんか、子供は喜ばないと思うのに 翔は食べたそうだった、理世は、洗ったばかりのぐい飲みを拭き上げ おからを盛って「翔ちゃん、食べて見る?」と聞いた。 「うんっ」翔は、その言葉を待っていた様に返事をすると もう、食卓の前に座り、おからを盛った、ぐい飲みに添えられている 小さなスプーンに手を伸ばし、食べ始めた。 だが、やっぱりおからは少しも減らず、小さなスプーンも 動いてはいない、それでも「ああ、美味しかった、理世有難う」 翔は、満足した声でお礼を言うと「美味しかった、美味しかった」と 部屋中を、ぐるぐる回って言う「おからが好きだったのか」と、理世は そのおからを食べて見たが、やっぱりおからの旨味は減っていた。 霊が、食べ物を食べると、旨味だけが無くなるなんて、聞いた事もないけど これが事実なんだと、思った理世は、はっとした。 翔は、食べ物に飢えていた、食べたい食べたいと言う思いが この世に留まっている理由かもしれない、そう思ったのだ。 ならば、食べたかった物を食べさせてやれば、あの世へ逝けるかも知れない やっぱり、翔の食器を買って来て良かった。 そう思いながら、入浴し、風呂上がりのアイスクリームは、翔と一緒に食べる 「今日のアイスも、美味しいね~」翔は、大満足で押し入れに入ると すぐ寝てしまった、今までは、日中はずっと寝ていて、夜起きていたと言うが今日は、日中ずっと外を見ていたので、もう眠くなった様だ。 千穂と約束していた休日になった、翔は、朝から理世が居るので 嬉しいらしく、掃除や洗濯をする理世に、ついて回る。 「午後からは、友達の所へ行くから、お留守番しててね」理世がそう言うと 「良いよ」と、外を見ながら言った翔は「あ、あれな~に」と言う。 見ると、ポン菓子屋さんが来ていて、お米や砂糖を持った人が集まっている 「あ、小母ちゃんまで」その列に、富貴子の姿もあった。
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