一人ぼっちの少女

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一人ぼっちの少女

 その家は、小さくはないが古くボロボロだった。  庭には雑草だらけの畑があり、道具をしまう物置小屋が端に建っていた。その物置小屋の隣にある小さな鳥小屋には、鶏が数羽飼われている。鶏はすっかり野性を忘れてしまったらしく、化物が近づいても騒がなかった。  少女が立て付けの悪い玄関戸を開け、化物を家の中へ招き入れる。窓の雨戸が閉め切りだったせいか、家の中は暗かった。  少女は化物を椅子に座らせると、手探りでコップに水を入れ化物の前に置いた。そして化物に色々な話を沢山した。家の裏に人間では登れない崖の壁かある事、兄がそこを登ろうとして転げ落ちた事、少女の話は家族の事が大半だった。どれも楽しそうに、まるでその映像が目に浮かんでいるかのように話していた。  少女は元々お喋りな方では無かった。しかしずっと一人だったせいで、話したい事が溜まりに溜まっていたのだ。  「本当はね、犬も居るのよ。いつも獣を追い払ってくれる勇ましい子なんだけど、(しばら)く帰ってこないのよ」  少女は、物置小屋の傍で横たわる犬の死体に気づいていなかった。  日が暮れ、外からホーホーとフクロウの鳴き声が聞こえてきた。  「いけない、もうこんな時間」  少女はすくっと立ち上がり、台所へ向かった。手探りで物を確かめ、時に豆の入った容器を倒しながら料理を作り始める。少女が火打石で火を点ける。炎に慣れていない化物は驚き、椅子から立ち上がった。  「どうかしましたか?」  「いや、何でもないよ」  火を点けたかまどの傍には、布が落ちていた。化物は気が気ではなかった。
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