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出店を眺めながら歩いていると、奥の方に金魚すくいの屋台を見つける。
「あった。」
「だけど金魚が弱りそうだから帰りでいいです。」
「わかった。
じゃあちょっとお祭り見てみようか。」
一番奥の広場では賑やかに盆踊りが行われている。
池を囲んで浴衣姿の人たちがこの工場オリジナルの踊りを踊っていて、広場を囲むように建てられた工場の壁は派手な電飾で飾られていた。
「そうだ、うちわの抽選!」
家を出る前に祖母はみんなに一枚ずつうちわを渡してくれた。
小学生が描いた絵が載ったうちわには小さく番号が書いてあって、その番号で抽選会が行われるらしい。
ジュースなどの下の方の賞は昼間のうちに抽選が終わってどこかで当選番号の掲示と一緒に商品の交換をしているらしい。
「どこでやってるんだろう。」
「ちょっと回ってみますか?」
「うん。」
会場をぐるりと回ると、テントが2つ並んだところに賞品の引き換え所を見つけた。
「あれかな?」
テントには当選番号が手書きで張り出されている。
「あ、当たってる。」
うちわを見ながらかすりが声を上げた。
「ほら、下2桁が03」
「ホントだ。」
テントの中にうちわを持っていくと、うちわに書かれた番号のところにはんこを押して、並んだ賞品の中から好きなものを選ぶように言われる。
かすりはお菓子やジュースの中にからコーヒーを選んでとった。
「何もらったの?」
テントの外で待っていた阿部にコーヒーを手渡す。
「はい、阿部さん。
冷えてますよ。」
「コーヒーもらったの?」
「そう、阿部さんに。」
「かすりちゃんが欲しいのにすればいいのに。」
「それが欲しかったんです。」
そう言って笑う。
阿部は、
「ありがとう。」
そう言って受け取ると、早速蓋を開けて一口飲んだ。
「本当に冷えてるね。」
「氷が沢山入った水の中に入ってたんです。
ほら、手も冷たいでしょ?」
かすりは阿部の腕を両手で掴む。
「ホントだ。
そうだ、かすりちゃんは喉乾かない?
何か買おうか?」
「うーん、かき氷にしようかな……それともレインボーアイスかな……。」
「点滴みたいなジュースもあったよ。」
「あった!!
なんかすごいですよね?」
「屋台も時代と共に変わってるよね。
クルクルしたじゃがいものフライとか、俺が子供の頃はなかったもんな。」
「フルーツの缶詰を凍らせただけのやつもなったですよね。」
「何か買ってみる?」
「うーん。
あんまり惹かれないんですよね。
トシなのかな?自分が子供の頃に食べたものが食べたくなるのは。」
「そうかもしれないね。」
結局かすりはかき氷を買って貰って、工場の開放している食堂で座って食べた。
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