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二人がご飯を食べ終わる頃に阿部が会社に戻ってきた。
「今日はやっぱり昼に間に合わなかったよ。」
残念そうに空になったお弁当箱を見つめる阿部。
そう言いつつもお昼ご飯をを持っていないから外で食べてきたのだろう。
「オレかすりさんのお弁当分けてもらったんスけど、マジ美味かったッス。」
「何ぃ??
かすりちゃんのお弁当食べたのか?」
「あ、はい。」
「くっそォー。
俺のかすりちゃんの弁当……。」
「俺のかすりちゃん??」
五十嵐とかすり、そしてお昼から戻ってきた他の社員が阿部を見つめる。
「いや、違う。
でも違わない。
俺のって言うのはかすりちゃんの弁当で、かすりちゃんの事ではない。」
慌てて訂正する阿部が面白くて、みんなで笑った。
「俺だって食べたかつたのにぃ……。」
みんなに笑われても、お弁当が食べられなかったのが悔しいのか、それとも五十嵐に食べられたのが悔しいのか、阿部はその場でうなだれた。
「明日はカレー作って来ますから、ね?」
駄々をこねる子供をなだめるようにかすりが言った。
「マジっすか!?
俺も食いたい。」
そこへお昼から帰ってきた莉子も話に参加してきた。
「何?
カレー?私も食べたい。」
かすりは少し考えて、
「じゃあお鍋で持ってきますね。」
「やった!!」
みんなの声が揃った。
「阿部さんの分のご飯は持ってきますけど、他の人はご飯と器は持ってきてくださいね」
「ウッス。」
「じゃあ私はサラダ持ってくるわ。」
「じゃあ、俺は……。」
「阿部さん、無理しなくていいッスよ。
俺らはご馳走になっちゃいましょう。」
五十嵐の言葉に莉子とかすりが頷く。
「なんか一番年上なのに悪いな……。」
「大丈夫ですよ、もっと高いものご馳走になりますから。」
莉子の冗談にみんなで笑った。
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