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ベッドに座って部屋を眺めていると、いつになく机に目がいって机に向って座ってみる。
『この机でお母さんは勉強してたんだ……。』
しっかりした造りのがっしりした机を眺めると、少し羨ましく思った。
かすりには自分の机は無かったから。
勉強はいつも茶の間のテーブルでして、学校の荷物はカラーボックスにしまっていた。
今まで見てはいけないと敢えて見ていなかった本棚に目をやる。
かすりはさっき祖母が言っていた甘い卵焼きの事が気になっていて、そのヒントがこの机にあるかもしれないと思ったから。
机の上の本棚にはそれこそ教科書やノート、辞書くらいしか無かった。
ノートの一冊を手に取ると、綺麗にまとめられた書き込みの空きスペースに母の似顔絵があって、吹き出しで学習のポイントが書いてあったり、その日先生が言った面白い話などが書いてあって、母のお茶目な性格が表れていた。
机の天板にくっついてすぐ下にある横に2つある薄い引き出しを開けると、そこには文房具が、もう一つの引き出しにはプリントがクリアファイルに入ってあった。
それから机の下に収納されている縦3段の引き出しを上から順に開けた。
1つ目の引き出しは、ホチキスやパンチなどの少し大きめの文房具が、2段目には手帳が沢山入っていた。
その中から一番新しい年のものを手にとってペラペラとめくる。
6月7日 1限目休講
6月10日 6限目補講
6月29日 カラオケ 10時フェスタ集合
女子大学生らしい予定が書き込まれていた。
そのまま何ページか進んで見ても変わった事は書いてなかった。
一番下の大きな引き出しを開けると、教科書やノートが沢山入っていた。
中にはミステリーサークルの合宿の日程なども見られる。
母は時間があくとテレビの推理ドラマを見ていたのを思い出して納得した。
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