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「かすり?」
「はい。」
「これ、私ので悪いけど新しい下着だから使って。」
ドアを開けると祖母が下着を渡してくれた。
「返さなくていいからね。」
そう言って笑っている。
「あの……。」
「なに?」
「こんな事、聞いていいのかわからないんですけど……。
私の両親が離婚した理由って知ってますか?」
祖母は一瞬動きを止めた。
「さあ……。
年賀状の名前が北原になってたから離婚したんだろうとは思ってたけど、それについては何も書いてなかったね。
亡くなるちょっと前にかすりのことを宜しく頼むって電話があったんだけど、その時も『勝手に出ていったのにこんな事になってすみません』としか言わなかったし……。
あの子の事だからよっぽどの理由があったんだと思うけど、何があったかまではわからないわ。」
「そうですか……。」
暗い声でそう言うかすりに、祖母はいたたまれない気持ちになる。
「お風呂、いつでも入れるからね。
ご飯とお風呂、どっちが先かいい?」
祖母は敢えて明るい声で言った。
「じゃあ、ご飯先で……。
私、ご飯の準備手伝います。」
「そう?
悪いけど、お願いね。」
「はい。」
かすりは祖母と一緒に部屋を出て、母の部屋のある2階から1階の台所へ行った。
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