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お風呂からあがって茶の間で祖母とテレビを見ながらお茶を飲んでいたかすりは、祖母にお休みの挨拶をして母の部屋へ戻った。
と言ってもまだ9時。
眠くもなければやることもなくて、かすりはまた母のお弁当ノートを開いた。
なんとなく眺めていると、だんだん"マサさん"の好みがわかってきた。
好きなものは甘い卵焼きとウインナー、唐揚げ、チーズ、ハンバーグ、こんにゃくの煮物などで、嫌いなものはブロッコリー、セロリ、椎茸、ピーマン。
そのどちらもかすりの好みと似ていて、自分の仮説が正しいという裏付けを得たような気がした。
『もし"マサさん"が私のお父さんのだとしたら、どうしてお母さんは別れたのだろう。
ずっとその人の好きな卵焼きを作っていたって事は忘れられないとか、まだ好きだとかいう意味だと思うから……。
増して駆け落ちしてまで結婚した相手なのに……。』
布団に転がりながら考えて、そのまま眠ってしまった。
鳥の声で目を覚まして身支度を整えてから一階に下りていくと、台所からです何かを切る「トントントン」という美味しそうな音が聞こえてくる。
この音はかすりの中で幸せの音。
誰かが自分の為に料理をしてくれているという特別な音なのだ。
幸せを感じながらその音に近づいた。
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