キラキラバナナパフェ

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次の日、仕事が終わるとかすりは自分の席で阿部を待っていた。 「じゃあ私は先に帰るけど、楽しんできてねー。」 莉子がタイムカードを切った。 「何か楽しい事があるのか?」 給湯室からフロアに戻ってきた社長が二人に近づく。 「今日かすりんは阿部さんとデートなんですよ。」 莉子はわざとふざけて言った。 かすりもそれに乗っかる。 「そうなんですぅー。 阿部さんに誘われてぇー。」 社長はかすりの言い方で本当に付き合っているわけじゃないとわかって笑った。 「阿部を襲うなよ。」 「何ですかぁ?それ。」 莉子は豪快に笑っている。 そこに阿部と五十嵐が他の社員たちと一緒に戻ってきた阿部。 「かすりちゃん、遅くなってごめん。」 「何だ?デートか?」 次々と入ってきた社員たちにまで同じことを言われても阿部は動じることなく、 「そうなんですよ。 邪魔しないでくださいね。」 と、冗談を言う。 「2人共否定しないって事は本当に付き合ってるのか?? 阿部の弁当かすりちゃんが作ってるしな……。」 社長が混乱しているのがわかった。 「ご想像におまかせしまーす。」 阿部がはっきり答えを言わないので、かすりが顔の前で手を横に振って『違う違う』と合図する。 社長はそれを見てホッとした顔をした。 「俺も行きたいなぁー。」 五十嵐が遠慮がちに小さな声で言う。 「イガはだめーー。 かすりちゃん行こー。」 そう言って阿部が腕を腰のところでくの字に曲げてかすりの前に出すと、かすりはその間に自分の腕を絡めてくっついた。 「はぁーい。 お疲れ様でしたー。」 2人のちょっとやりすぎたおふざけに、残された人たちは苦笑いした。 「嘘から出た誠になったりしてな……。」 社長の言葉に五十嵐が反応する。 「なんすか?それ。」 「辞書引け、辞書。」 それを合図にそれぞれバラバラに散らばった。
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