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阿部がメニューをかすりに向けて開いてくれる。
「俺はどれも好きなんだけど、煮込みハンバーグとオムライスが特に好きかな……。」
メニューには本格的なイタリアンというよりは、お母さんが作る洋食といったものが並んでいて、最初のイメージ通りで何だか嬉しくなった。
そのメニューの中からかすりは煮込みハンバーグを選んだ。
「飲み物は?
ここのジュースは注文を受けてからミキサーでつくるから美味しいよ。」
オレンジジュース、リンゴジュース、バナナジュース、いちごジュースと、これだけの材料を常時用意しておくのはかなり経費がかかるんじゃないかと変な心配をしてしまう。
「ジュースはいいかな……。」
かすりがそう答えたのは、100%フレッシュジュースでは仕方ないけど、値段が高いと思ったから。
阿部は気にせず頼めと言うかもしれないけど、ジュースに700円もかけるのはかすりの中では当たり前ではなかった。
「デザートもあるよ。」
ドリンクの反対側のページには、ホットケーキやチョコレートパフェなどの文字が並ぶ。
その中でバナナパフェの文字にかすりの視線が止まった。
だけどすぐに
「いえ、大丈夫です。」
かすりはニコリと笑ってそう言うと、メニューをパタンと閉じた。
「かすりちゃん、コーヒー好き?
紅茶のほうがいい?」
「コーヒーも飲みますけど、紅茶のほうが好きです。」
「じゃあ紅茶でいい?」
「あ、すみません。
じゃあホットミルクティーでお願いします。」
阿部がママに目で合図を送るとすかさずママがやってくる。
「俺はオムライス。
かすりちゃんは?」
「私は煮込みハンバーグでお願いします。」
「ホットコーヒーとホットミルクティー、あ、あと、バナナパフェ。」
「飲み物は先に持ってくる?食後にする?」
「私はどちらでも……。」
「じゃあ食後で。」
「わかりました。
ちょっと時間かかるけど、待っててね。」
そう言うとママは厨房へ入って行った。
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