全員出動!梅干し作りはじめ!! ー前編ー

6/13
前へ
/437ページ
次へ
お昼が終わると社内にいる男性社員は有無を言わさず梅干し作りにかり出された。 「かすりんはこっちね。」 「はい。」 かすりが莉子についていくと、お昼前にみんなに配ったタオルを洗うように言われる。 二人で手分けして8人分のタオルを洗うと、午前中と同じ様に冷凍庫に入れた。 「3時に使って、また洗って冷凍して帰りにまた使うから。」 「はい。」 午後の作業も暑いながらも和やかに進んで、かすりはみんなと話しながら作業することが楽しく感じていた。 普段現場で仕事をする社員と話す機会はあまりなかったので、今まで見た目だけで怖そうな人だと思っていた人が話してみると意外と優しかったり、強面の人が実は孫にはデレデレだったりと、新たな発見もあった。 かすりが楽しみながら梅のヘタ取りをしている中、五十嵐は専務の手足となって走り回っていた。 午前中に干して水分をとった梅を倉庫の奥にある樽に入れて塩を入れたり、ヘタを取った梅を洗って干したりと、かなり忙しそうだ。 「イガはだいぶこき使われてんな。」 ヘタを取りながら遠巻きに見ていた遠山が言った。 遠山は阿部よりも5つくらい上の30代半ばの社員だ。 落ち着いた雰囲気が実際の年齢よりも上に見られる原因になっている。 「まあ、あれは新人が一度は通る道みたいなものだからな。」 あと数年で定年を迎える蓮田が楽しそうに答えた。 その後かすりたちは黙々と作業を続けて、キリのいい所で今日の梅干し作りは終了した。 フロアに戻って急ぎの仕事がないか確認すると明日までに見積書を2件作ってほしいとのメモがあったので、それを作り終えるとちょうど終業ベルがなった。 かすりは大きな入り口が空いた倉庫内で汗だくで作業していたので、早くお風呂に入りたくて給湯室の片付けを急いだ。 片付けが終わる頃に阿部が給湯室に入ってきた。 「お疲れ様です。」 かすりは自分が汗臭いだろうと思ってさり気なく阿部と距離を置く。 「お疲れ。 今日は大変だったでしょう?」 「はい。 梅干し作るの初めてなんで何をしていいかわからなくて……。」 「そうだよね。 今自分で梅干し作る人ってきっとあんまりいないよね。」 阿部は冷蔵庫の中の麦茶を美味しそうに飲んだ。 「かすりちゃん、明日お弁当って頼める?」 「ああー。 明日は莉子さんと一緒に熱々ラーメン食べに行く約束してるんです。」 「ラーメンか。 いいね。 俺も行っていい?」 「私はいいですけど……。」 「オッケ。 梨子ちゃんに聞いてくる。」 阿部はそう言って給湯室を出ていった。
/437ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3102人が本棚に入れています
本棚に追加