全員出動!梅干し作りはじめ!! ー前編ー

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それぞれ自分の仕事の予定に合わせて入れ替わり立ち代わり手伝ってくれる社員たちと楽しく話しながら作業していると、事務所から電話番をしていた中田が小走りで出てきた。 「阿部さん。 御幸町の花田さんから電話なんですけど、今大丈夫ですか?」 阿部はすぐに立ち上がってあるき出した。 「今行く。」 しばらくして阿部が出てくると莉子とかすりのところへ来て、 「ちょっと行ってくるけど昼に間に合わなかったら悪いけど3人で行ってくれる?」 そう言いながらズボンのポケットから車の鍵を取り出している。 「わかりました。」 莉子の返事を聞くと、 「悪いね。」 と言って車に向かってあるき出した。 「あーあ、おごってもらえると思ったのに。」 莉子が頬を膨らませる。 「仕方ないですね。 でも阿部さんの事だから今日が駄目でも他の日にどこか連れてってくれるかも……。」 「確かに。 つーか、連れてってもらおう。」 そう言うと莉子はやっと機嫌を直したようだった。 10時頃に鈴木部長が放った 「もう休むべよ。」 の言葉で梅干し隊は一斉に立ち上がってそれぞれ体を伸ばした。 「かすりちゃん、タオルある?」 「はい、持ってきますね。」 事務所に戻って冷たいタオルを人数分用意すると、冷蔵庫からキュウリが入った袋を出した。 タオルをバケツに入れて倉庫へ持っていくと、タオルを取りに来た人に、 「よかったらキュウリいかがですか?」 と言ってキュウリを手渡す。 「おっ、いいの?」 「はい、どうぞ。」 その場にいた全員にキュウリを配ると、自分もキュウリにかじりついた。 割り箸に刺してあるので外でも食べやすい、と誰かの声がする。 「うまいね。 かすりちゃんが作ったの?」 「はい。 昨日、八百屋で新鮮そうなキュウリを見つけたので作ってみました。」 「こりゃかすりちゃんの貯金箱にいっぱい金入れなきゃな。」 「そんないっぱいじゃなくていいですよ、茶色い紙のお金一枚で。」 鈴木部長は 「馬鹿言ってら。」 と言ってガハハと豪快に笑った。 みんなが食べ終わったのを見計らって割り箸を回収する。 それを給湯室に捨てながら残ったキュウリを冷蔵庫に入れて倉庫へ戻ると、みんな作業を始めていた。 タオルはそのまま首にかけて使うようだ。 かすりも真似をしてタオルを首にかけて、乾いてくると外の水道で濡らして使う。 お昼まであと20分というところで、 「メシメシー。 飯にすんべ。」 と、社長の声が響いた。 どうやら社長も疲れたらしい。 莉子とかすりはいつもより長い昼休みになることに喜んだ。
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