駄菓子でトトカルチョ

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「これ何?」 阿部が竹輪を持ち上げて言った。 「竹輪の中に新生姜の漬物を入れたんです。 結構美味しいんですよ。」 かすりがそう言う間に阿部は竹輪を口に入れている。 「本当だ。 さっぱりして美味しい。 これは太陽?」 今度はウインナーを指してあいる。 「太陽でもひまわりでも、どっちでもオーケーです。」 「可愛いね。」 そう褒められるとかすりの顔は思わず緩む。 一人で食べていたら絶対に言ってもらえない言葉がすごく嬉しい。 阿部とかすりがお弁当を食べ始まった頃に、莉子がコンビニの袋をぶら下げてやってきた。 「今日はコンビニですか?」 「そう。 あんかけ焼きそばが食べたくて。」 そう言って莉子はかすりの隣に座った。 「この辺であんかけ焼きそばが食べられるお店無いですもんね。」 「そうなの。 私あんかけ焼きそば大好きなのに……。 だからちょっと味に不満はあるけどコンビニので妥協してるの。」 「仕方ないですよね。」 莉子はうんうんと頷く。 「私もたまに食べたいな……。 作ってみようかな?」 かすりがあんかけ焼きそばの作り方を思い出しながら言うと、 「ずるーい。」 と、莉子からブーイングが上がる。 「へ?なんでですか?」 「私はコンビニのそんなに美味しくないあんかけ焼きそばで我慢してるのに自分だけ美味しいあんかけ焼きそば食べるなんて!」 「えええーーー。 じゃあ莉子さんも自分で作ればいいじゃないですか?」 かすりが理不尽な莉子の言葉についムキになる。 「私が作るんだったらきっとコンビニの方が美味しくなっちゃうよ。」 「それはないでしょう。」 かすりは苦笑いした。 「いや、美味しくない自信がある。」 莉子は『エッヘン』と言わんばかりに胸を張る。 「どんな自信ですか。」 「俺も美味いの食べたい。」 かすりと莉子のやり取りに、阿部が相変わらずマイペースに入って来た。 阿部のマイペースにはかすりもかなわない。 「あんかけ焼きそばはパリパリするのが美味しいからお弁当には持ってこられないですよ。」 まるで子供を諭すように、そして申し訳なさそうに言った。 「だよねー。」 莉子もかすりの言葉に納得したようだった。 「そっか。」 阿部は口元は笑ってるけど、少し残念そうに言う。 「今日もかすりちゃんの美味しいお弁当食べられたからあんかけ焼きそばは諦めるよ。 気にしないで。」 「すみません。」 かすりは何一つ悪くないんだけど、期待している阿部と莉子を裏切った様な気がして、何かいい方法は無いか後で調べようと心に誓った。
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