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甘い?しょっぱい?卵焼き
かすりは朝から草餅を作っていた。
ヨモギは春に祖父母の田んぼの周りで摘んだものを軽く重曹を入れたお湯に浸して水に晒して水気を切って冷凍してあった。
上新粉と砂糖を入れたものにお湯を入れて捏ねると、適当な大きさに分けて蒸し器で蒸す。
蒸した餅にヨモギを入れてすりこ木で餅を潰しながらヨモギをまんべんなく混ぜた。
これが結構疲れるのだ。
今日は月に一度の祖父母の家に行く日。
何を作っていくか迷った挙げ句に草餅を作ることにした。
冷凍してあったヨモギの量に合わせて餅を作ったら、少し作りすぎたかもしれない……と出来上がった草餅を前にかすりは考え込んだ。
普段なら迷わず冷凍するけど、今日はふと阿部の顔が浮かんだ。
阿部さん、草餅食べるかな……?
だけど今日は土曜日だし、阿部がどこに住んでいるか知らない。
もしもかすりが草餅を食べないかと連絡すれば人のいい阿部は草餅が例えそんなに好きでなくても、家が遠くても、嫌な顔一つせずに取りに来るかもしれない。
そう思うと一度手に持ったスマホをキッチンの作業台に置いた。
餅とり粉をまぶした草餅を冷凍する分だけ一つ一つラップで包んでいく。
食品保存袋に入れて冷凍すると、祖父母の家に持っていく草餅はタッパーに入れて買い物に出かけた。
いつも祖父母の家にお昼前に着くように出かけている。
11時頃に祖父母の家に着いて、祖母と一緒にお昼の用意をして祖父母と三人でお昼を食べるのだ。
祖父母の家には車で2時間かかるから、9時に家を出れば間に合う。
かすりは近くのスーパーで生鮮品や日用品を買って祖父母の家に持っていくようにしていた。
手土産的なものは必要ないと言われていたので最初は料理だけを持っていっていたけど、祖父母の家はかなり田舎にあってお店が少ないので、最近は近所のスーパーで肉や魚を買って持っていっている。
今日は鯖や鯛の粕漬け、豚肉と卵、明太子、トイレットペーパーと焼酎を買った。
家に戻って草餅と仏壇に供える花を持つと、祖父母の家へ向かった。
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