駄菓子でトトカルチョ

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駄菓子でトトカルチョ

かすりはお昼の始まりを告げるベルが鳴ると自分の机の上の茶筒で作った貯金箱、通称ランチョン箱の隣にあるお菓子入れにお菓子を補充した。 ランチョン箱にお金を入れてくれる人の為にいろいろな種類の駄菓子を置いていたら意外に人気で、ポケットの中の小銭を入れてくれていた人だけでなく、お菓子が食べたくてお金を入れる人が出てくるようになった。 お菓子はいわゆる駄菓子が大半なので、かすりは『お金を入れなくても勝手に食べていいですよ』と言っているのだけれど、律儀な皆さんはきっちりお金を入れてくれている。 みんながいくら入れてくれているかはわからないけど、明らかに置いてあるお菓子の金額よりランチョン箱に入っているお金の方が多いので、かすりもいろいろなお菓子を常に置いておくようにしている。 今置いてあるお菓子は、ツバメのたまご、うめぇ棒、小さなミルク瓶形の容器に入ったヨーグルト風味のお菓子、フルーツグミ、きなこ棒、蒲焼風お菓子、シュワシュワキャンディー、カリカリ梅、キヤベッジ太郎、コーラ味の10円ガム(当たり付き)。 これだけ揃えると場所を取るので、仕事をする時はかすりの机の隣にある長机に置かせてもらっている。 最初は机の上にお菓子を置いておいたら社長に怒られるかと思っていたけど、社長は怒るどころか今ではいいお客さんになっている。 お菓子を補充してお弁当をレンジで温めて席に戻ると阿部が帰ってきた。 「お疲れ様です。」 「ただいま。」 「ご飯今からですか?」 阿部はコンビニの袋をぶら下げている。 「そう。」 「じゃあ久しぶりに半分こします?」 「いいの?」 阿部は嬉しそうに近づいてきた。 「いいですよ。」 阿部とお弁当を食べる時、かすりは自分の机ではなく隣の長机で食べるようにしている。 かすりは椅子に座ると、お弁当箱の蓋におかずを取り分けた。 今日のお弁当は海苔を巻いた卵焼き、ひまわりの形に細工したウインナー、鶏の南蛮揚げ、もやしとほうれん草の胡麻和え、蕗と油揚げの煮物、竹輪の中にピンク色の新生姜の漬物を入れたもの。 蕗と油揚げの煮物は水分が多いので別の容器に入れてきている。 「阿部さん、蕗って食べられます?」 「うん。 食べられるよ。」 「私、家でたくさん食べたので全部食べてもらっていいですか?」 そう言って蕗の入った容器を阿部に差し出す。 「蕗ってきゃらぶきじゃないんだね。」 「そうなんです。 それ、祖父母の家に出てた蕗なんですけど、水蕗なんで煮物にしたんです。」 「へえー。 これはこれで美味しそう。 ありがとう。 いただくよ。」 かすりのお弁当を大切そうに受け取った阿部は、コンビニの袋の中からパンとデザートを出してかすりに渡した。 「ありがとございます。」 阿部は早速蕗を口に入れる。 「うん、美味しいね。」 「良かった。 蕗って癖があるから嫌いな人も多いんですよね。」 「この独特の癖がいいのにね。」 阿部はゆっくりと味を確かめる様に蕗をもう一つ口に入れた。
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