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「つまり、こいつを"仕立てる"ってことか?」
「そういうことさ。こんな似顔絵じゃ誰だって間違う。だけどこいつがヒーローならば、それが真実になるでしょ」
「相変わらず大胆な発言だな。だけど中身は伴わないぞ。そもそもの資質が疑問だ」
確かにポゴの言い分は理解する。どんな嘘だろうと、徹底して繰り返せば真実になる。
しかしそれも中身が伴ってこその芸当だ。その状況で嘘を押し通す自信がない。
それでもポゴは強気だ。
「あんた気が小さいね。いつもは『俺様は、“スーパーヒーロー”だ!』なんて言ってるくせに」
その台詞がごんぞの魂に火を付けた。
「そう、俺様はスーパーヒーロー!」
グッと胸を張る。
「その勢いで行こうよ。中身なんてどうでもなるでしょ。もしばれても知らなかったで押し通せばいい。ボクらが騙されたんだ、議会の連中も騙せるさ」
「確かにそうだ」
こうしてごんぞも覚悟を決める。宇宙の正義を守る。そんな崇高なる職業に就いてはいるが、基盤となるのは自分自身。自分を守れなくてなにが正義だ。少しぐらいの嘘は許されるだろう。
「そうと決まれば、善は急げだ」
言って立ち上がり、握っていたカツラをポケットにねじ込んだ
「まったく、人騒がせな奴だよ」
そしてヨッタの亡骸を肩に担いで歩きだす。
「グルルル!」
響く唸り声。くっきーだ、ヨッタ共々ハイラックスに轢かれたというのに、ヨッタを気遣う思いに溢れていた。
「お前も連れていって欲しいのか?」
それをごんぞが見下ろす。
くっきーがごんぞの足首に噛み付いた。
ごんぞは微動だにしない。くっきーもその牙を緩めようとはしない。
「流石シーク、忠犬だね」
ごんぞの口元に笑みが浮かんだ。おもむろにくっきーの首筋に手刀を入れる。くっきーが泡を吹いて気絶する。
「ごんぞ、お手柔らかにね」
ポゴが言った。
「分かってるって。気絶させただけだ」
「行くよ」
ごんぞの台詞を背中で聞きながらハイラックスに乗り込む。
「安心しろ、お前も連れてくから」
ごんぞもハイラックスの後部座席にヨッタとくっきーを押し込むと、運転席に乗り込んだ。
「よし、我が家に戻るか」
ハイラックスのエンジンを掛けるごんぞ。
「腹減ったね。ごんぞ」
その助手席、ポゴが言った。
「お前の好きなプリン買ってあるぞ」
「本当? やったー」
ひっそりと静まる雑木林にベッドライトが輝きだす。
それは地球の引力に逆らい、ゆっくりと空に浮遊していく。やがて夜空に輝く星となっていった。
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