第1話 シャドー界の悲劇!カゲはトモだち?

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 その瞬間、映美の目の前に広がったのは、一面に星屑が散りばめられた黄金色の宇宙。夢のようにきらびやかなその景色の中で、映美は確かにカーラの魂に出会った。 (ほらね!やっぱりカーラは綺麗だった)  ふわふわとした紫苑の髪、同じ色に輝く大きな瞳。薔薇の頬に、丹花の唇。そして、清らかな水色を基調に色鮮やかなリボンやフリルを散りばめた、影の乙女の装束。そんなカーラの全てが映美の体を抱くように包み込み、染み込むように一体化する。 (不思議だな……カーラが見えなくなったのに、今までで一番近くに居る感じがするや) 《映美さんは今、私という存在をその身に纏ったんです。私が映美さんの魂を包み込む外殻となり、力を高め命を守る……それが伝説の戦士、カゲトモなのです》  黄金色の宇宙を漂いながら、映美の体が変わり始める。短髪に近かった髪はボリュームを増してふわふわのボブカットになり、色はカーラと同じ紫苑の色。目の色は変わらないが、瞳の奥に一点だけカーラの色が落とされる。学校の制服はみるみる形態を変じて影の乙女の装束となり、胸元とスカートのひだに一際目を引く漆黒の色が差し込まれる。靴はかかとの高いロングブーツだ。 (気持ちが高鳴る……何だか力も湧いて来る……これがカゲトモ!ボクはとカーラは、今ふたりでカゲトモになったんだ!)  最後に、シャドー界の紋章の入ったふたつのバレッタで両サイドの髪がまとめられ、ここに地球を守る人影合身の戦士、カゲトモ=エミカーラが誕生した。  閃光がほとばしり、瓦礫の山が内側から弾けるように吹き飛ぶ。デビルアルマーを伴いその場を去りかけていたティーン・ブラーボが振り返り、驚きの声を上げる。 「何ィ!?」  砂煙が晴れた後に立っていたのは、見た目にはひとりの少女。ただしそれは何十倍もの生の輝きを放ち、何百倍ものパワーを誇るカゲトモの少女だ。今、その掌を力強く天にかざし、彼女は産声にも等しき名乗りを上げる。 「影の勇気に、人の愛!絆の戦士、カゲトモ=エミカーラ!!」 高らかに叫んだ声はハンティングフィールドの停止した空気すら震わせ、命なきデビルメカまでもが気圧され後ずさる。 「地球の命に仇なす者よ……報いのパンチを受けなさい!!」  エミカーラがきりりと指差す先は、サングラスの奥で目を丸くしたティーン・ブラーボ。彼の持つ端末が赤く点滅して警告音を発し始める。 「何という高エネルギー反応……これが女王の密命の答えだというのか?」 端末を操作し、目の前のエミカーラの分析を試みるティーン・ブラーボ。しかし、宙に映し出されたグラフもメーターも、全てが振り切れてエラーを連発する始末。 「危険……あまりに危険だ。こいつを放置しては必ずやファミリーを脅かす禍根となる!デビルアルマー!そいつを始末しろ!」  ティーン・ブラーボの号令と共に、デビルアルマーが咆哮音を上げて突進する。同時にエミカーラも跳躍。一跳びでデビルアルマーの顔の高さまで飛び上がり、凶悪な爪を迎え撃つ。 「やぁーっ!!」  右のげんこつを振りかぶり、エミカーラがパンチを繰り出す。空を裂くその拳は強烈な衝撃波を纏い、迫り来るデビルアルマーの爪の一撃と真正面からぶつかった。 「カゲトモ・ストロングパンチ!!」  豪打一発。乾いた炸裂音が響き、デビルアルマーの右の爪は粉々に砕け散った。いや、それだけではない。なんと前腕部までもがダメージに耐えきれず爆発し、バラバラに分解した。 「何だとォ!?」  たたらを踏み後退するデビルアルマーを目の当たりにし、ティーン・ブラーボが驚愕する。頑強なスペースハルコニウムの装甲を持つデビルメカを素手で破損させる者など存在する筈が無い……しかし眼前の光景は彼の傲慢を打ち砕くのに充分だった。中空より軽やかに着地し、唇を結んでこちらを見据える少女。他ならぬカゲトモがそれをやってのけたのだ。 「この宇宙に、ファミリーに対抗しうる力があると言うのか……馬鹿な!」
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