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機械ゆえ恐怖の心を持たないデビルアルマーは、片腕を失ってもなお攻撃を続行する。鼻孔に備えられた二門の機銃を展開し、エミカーラを狙って掃射を開始した。確実な殺傷力を持つ弾丸が雨と降り注ぐ中、心の中で映美とカーラは言葉を交わし合う。
《映美さん、また攻撃が来ます!対処の仕方は私が教えますから、頑張って!》
(大丈夫だよカーラ!全部わかる……全部、伝わって来る!)
今にも全身を蜂の巣にせんとするその弾丸の雨を、エミカーラは軽やかなステップで避け、そのまま急加速。デビルアルマーの背後へと回り込むべく弧を描くようにダッシュする。デビルアルマーは頭部をフクロウのようにぐるりと旋回させて追従するが、エミカーラはそれよりも速い。機銃掃射に捕まることなく、あっと言う間にデビルアルマーの尻尾を掴んだ。
「おぉ~~~~~りゃっ!!」
丸太よりなお太いその尻尾をエミカーラは腕全体で抱え込み、満身の力を込めて持ち上げた。すると、驚くことに高さ10メートルを超す大鉄塊とも言えるデビルアルマーの巨体がふわりと浮き上がり、捕まえられた尻尾の先を支点にぎゅるんっと宙を舞った。
「正気かっ……!うっ、うおぉっ!?」
丁度その軌道上に浮かんでいたティーン・ブラーボが慌てて直撃を回避する。デビルアルマーの体はそのまま豪快に叩きつけられ、凄まじい轟音を立ててアスファルトに沈んだ。見事なカゲトモ・一本背負いの炸裂である。
「はぁーっ!!」
エミカーラが興奮して気合を発する。何とも圧倒的なカゲトモのパワーである。
「どうだ、ティーン・ブラーボ!大人しく宇宙に帰る気になったか!」
椅子にしがみつき懸命に体勢を立て直すティーン・ブラーボに向けてエミカーラが叫ぶ。びりびりと鼓膜を震わすその声に耳を押さえながら、ティーン・ブラーボは歯ぎしりをした。
「ガキめ……調子に乗るなよ。これまで幾多の惑星を征服して来た我がブラーボファミリー……その無敗の象徴たるデビルメカだ、そう簡単に倒せると思うな!」
ティーン・ブラーボの言葉通り、デビルアルマーは完全に壊れてはいなかった。装甲はそこら中がひしゃげ赤い目はショートして火花を吹いているが、まだまだタフさを残して猛然と立ち上がって来た。
「デビルアルマー!まだやれるだろう、エレクトロ・アタックを使え!」
命令を受け、デビルアルマーが背を丸めてかがみ込む。デビルアルマーの後頭部から尾部にかけては特に分厚い装甲がしつらえられた甲羅になっており、それを前面に出した構えだ。更に手足を体内に格納し、まるで巨大なタイヤのような形に変形した。
「何をするつもり?……まあいいや!先に叩く!」
エミカーラが地を蹴って飛び出し、一直線にデビルアルマーに向かって行く。デビルアルマーの体は徐々に光を放ち、甲羅のあちこちから緑色の電光が弾け始める。
《いけません!不用意に出ては!》
心の中でカーラが咄嗟に警告する。次の瞬間、電撃を纏ったデビルアルマーが急速に縦回転を始め、F1タイヤも真っ青の高速度でエミカーラに突っ込んで来た。
「わっ……マジぃ!?」
勢いのついたエミカーラは回避行動が取れない。あわや正面衝突かと思われたその時、カーラが動いた。
《シャイニング・プロテクション!》
カーラの掛け声と共にエミカーラの前面に光の防壁が展開され、衝突を防いだ。しかしデビルアルマーの必殺武器エレクトロ・アタックの威力はあまりに強く、その衝撃を完全には殺しきれなかった。釣鐘を叩き壊すかのような鈍い金属音を響かせ、エミカーラの体は後方へと大きく吹っ飛んだ。
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