8人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「ぎゃん!!」
ビルの壁面に叩きつけられ、蹴られた犬のような悲鳴を上げるエミカーラ。ビルには大きな亀裂が入ってしまったが、幸いにもエミカーラ自身は打ち身程度の負傷で済んでいる。カゲトモになったことで向上した耐久力と、カーラのシャイニング・プロテクションのおかげだ。
(いっっったぁ~~~~~~い!!)
それでも痛いものは痛い。心の中で映美は絶叫した。
(痛いよぉ~……でも生きてる!ありがとうカーラ、助かったよ)
《はぁ……はぁ……気をつけてください。シャイニング・プロテクションはあくまで緊急用の防御技です。私の体力を大きく消耗させてしまうので、そう何度もは使えません》
映美の魂をくるんでいるカーラが既に疲弊しつつあるのが、映美自身にもわかった。人影合身は決してノーリスクではないのだ。映美は少しシュンとした。
(うん……わかった。ごめんね)
《ウフフ、いいんですよ。今は目の前の敵に集中しましょう。……あの回転攻撃は厄介です。電撃を纏った状態でまともにぶつかられては、カゲトモと言えど無事で済むかどうか……》
映美とカーラが心の中で対話している間にもデビルアルマーはゆっくりと回転を始め、再度のエレクトロ・アタックに入ろうとしている。エミカーラは今やっとビルの亀裂から抜け出て地に降り立ったところ。両者の距離は一見すると開いているが、体格や移動速度の差を考慮すると、実際の間合いはかなり差し迫っていると言えよう。
(どうする?……またあのスピードで来られたら、ちょっとかわせる自信が無いよ?)
《……私にシャイニング・プロテクションがあるように、映美さんにも固有の技があります。これも乱発はできないものですが、今は賭けるしかありません》
エレクトロ・アタックのチャージは既に臨界を迎え、先刻を上回る量の電撃がデビルアルマーの甲羅に蓄積された。上空から見下ろすティーン・ブラーボが再び勝ち誇る。
「ははっ!どうしたカゲトモ!さっきまでの威勢はどこへやら……勝てぬとわかって諦めの境地と見えるな。降参でもするかね?」
だが、そんな嘲りの言葉にエミカーラは応えない。じっとして目を閉じたまま、ただその時を待っている。デビルアルマーの回転速度、電圧の高まり、仕掛けて来る際の呼吸……そうした反撃のチャンスにのみ集中し、ただ待っているのだ。
「だんまりか……だが許さん!行け、デビルアルマー!」
遂にティーン・ブラーボが号令を下し、デビルアルマーが突撃して来る。だがエミカーラはそれをかわそうとはしない。確実に決められる、そう思える距離まで引き寄せる。勇気と覚悟が物を言う極限のコンマ数秒間……然る後、エミカーラはその目をカッと見開いた。
「今だっ!!」
エミカーラが右手を差し伸べ、心の中の映美が自らの固有技を発動させる。
(ボルテック・フラッシャー!!)
掛け声と共に、エミカーラの掌から虹色の光が渦を巻いてほとばしり、怒涛のようにデビルアルマーを飲み込んだ。
「なっ、何だこれは!?……そんな馬鹿なっ!」
ティーン・ブラーボが驚くのも無理はない。虹色の光はまるで猛烈な水流で撹拌するかのようにデビルアルマーを巻き込み、空中に留めたままその回転と勢いを殺したばかりか、機械の動作自体を全く停止させてしまった。
(これが、ボクの力……)
エミカーラとして自らの掌を凝視する映美に、カーラが微笑みかける。
《そうです。あらゆる物体の動きを一時的に押し留め、麻痺状態に陥らせて勝機を生み出す念動光線……それがボルテック・フラッシャーです。さあ映美さん、とどめを!》
(オッケー……行くよ!)
最初のコメントを投稿しよう!