第2話 いきなり喧嘩!?共同生活はドキドキいっぱい!

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『あの……どうしてあんなことを……?』 「え、ああ、カーラのほっぺ触ってる気分になれないかなって思って」  つまり、カーラの頬にあたる部分の影がちょうど清夏のお尻の右側に被さっていたというだけの話だ。そのあまりのくだらなさにカーラは思わずガックリ来た。 『わ、私のほっぺはお尻じゃありません!……ってそうじゃなくて!いいんですか?あの方に謝らなくて……』 「え~清夏?……まあ、いいんじゃないかな。清夏もしょっちゅうボクのことベタベタ触って来るし」 『そういうものなんですか……?』 「そういうものなんじゃない?知らんけど」  周囲の目を憚り小声でカーラとやり取りする映美。だが、机と向かい合ってブツブツ言っている時点で大概変な人である。現に、傍で見ている清夏はリコーダーを手に呆れていた。 「もしも~し、誰と話してんの?……こりゃ重症だわ」  その後、午前中の授業はつつがなく終了した。だが、いつもなら楽しみな昼休みも今の映美にとっては気の重い時間だ。日頃の注意力散漫と今日の遅刻のために、映美はこれから担任の呉羽先生から改めてお叱りを受けに行かなければならないのだ。 「あ~ダルい……なんでわざわざ昼休みに呼び出しなのさ。先生も休む時間の筈でしょ……お弁当食べててよ……」  ぼやきながら廊下を行く映美。今日の彼女の授業態度を見ていたカーラは心配だった。 『それは、映美さんのあの様子だと仕方ないかと……。午前の授業中ずっと私の方を見てばかりでしたし、ノートを取るより私にメモ書きで話しかける方が多かったですよね?』 「だって授業中は私語厳禁でしょ?」 『そうではなくて!』  朝の遅刻といい、映美の日頃のやる気の程が窺い知れるようでカーラは頭を抱えた。 『もっと真面目に授業を受けるべきだと言ってるんです!学生の本分は勉強だなんて言いたくありませんが、せめてノートぐらいはちゃんと……って、何してるんですか!』  カーラが言い聞かせている間に映美は壁際に移動、日の当たる白壁にカーラを映して髪の部分を指で撫でていた。 「カリカリしないでよぉ、ボクはこれでいつも通りなの」  なだめるように言いながら手櫛のように横髪をかきかきして来る映美の手を、カーラは仕草だけで払いのけた。 『やめてください!……もう!昨日も今日もですけど、映美さんって私のことかなり触りますよね?授業中も隙あらば私の顔やら肩やら撫で回して……そういうの、どうかと思います!』 「ちょっ、何何……待って場所変える」  カーラの剣幕が収まらないため、映美は改まって話すため近くの空き教室に飛び込んだ。 「カーラどうしたの、なんで機嫌悪いの?」 『なんでじゃありません!映美さんはシャドーメイトとして基本的なことができていないと言ってるんです!シャドーメイトは地球の精霊を祀り、あまねく生命を守る重大なお役目なんですよ?カゲトモになれる者となればそれは尚更……映美さんには常に品行方正に振る舞い自己を高める義務があるんです!』  一気にまくし立て、肩で息をするカーラ。映美はその勢いに飲まれつつも、心の内側にチクリと棘が突き出すのを感じた。そこが疼くままに、映美の唇は言葉を紡いでいた。 「……確かに、ボクはあんまし真面目じゃないし、人との距離の取り方もわかんない奴だってしょっちゅう言われるけどさ……」  映美の顔自体はへらへらと笑っているが、その声は確かに震えている。 「カーラの言うシャドーメイトって、要するにそういうものだったの?……義務とか、使命とか……ボクは、ボクはそんなんじゃっ……ない!」
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