第2話 いきなり喧嘩!?共同生活はドキドキいっぱい!

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 尋ねる清夏の目は映美への慈愛に満ち溢れている。映美は心の中で迷った。今ここで、清夏に相談すべきだろうか……カーラのこと、カゲトモの使命に関わることについて。 (カゲトモのことは絶対に秘密だったよね。それに……そもそもシャドーメイトのことなんてどう説明すればいいの?……信じてもらえるかな……無理だよね。ああっ、でも……)  清夏が心配してくれていることが伝わるだけに、彼女を偽ることへの罪悪感が映美の中でこみ上げて来る。逡巡したまま俯く映美の瞳が、再び潤み始める。  と、その時、突如清夏が「ねぇ」と切り出した。映美が顔を上げると、清夏の顔は正面を向いてただ中空を見つめていた。 「それって、あたしに事情を話せること?それとも話せないこと?」 「えっ……?」  映美は目を見張った。自分の思考が読まれたのかと思った。 「話せないんだったら、別に話さなくていいよ。あたしにはあたしの、映美には映美の世界があるんだしさ?……ただまあ、もし誰かに話してスッキリすることがあるんなら、ここで吐き出してってよ。あたしは見ての通りアッパラパーだから多分何もできないんだろうけど、ただ聞くぐらいならできるから」  そう言って清夏は映美に向き直り、ニカッと笑いかけた。その言葉は映美にとって大きな救いだった。清夏の優しさに改めて泣かされそうになりながら、映美は意を決して語り始めた。 「……友達とね、喧嘩しちゃったんだ。凄く、すご~く大切な友達と。どっちが悪いかとかは……うん、正直よくわかんない。でも、きっとボクにもその子にも何かしら軽はずみなものがあって、それがお互いを傷つけちゃった……そのことはボクにもわかるんだ」  そんな風に考え考え喋る映美のペースに合わせ、清夏は相槌を打ちながら聞いている。 「ボク、わからないんだ。誰かのことで気持ちが噴き出すなんてこと、今まで無かったと思うから……こんな気持ち、どうしたらいいのか全然わからなくてっ、それで……」 「泣いちゃったのね」  清夏に腕をさすられながら、映美はコクコクと頷いた。 「そうだねぇ……映美は、その子と仲直りしたいの?」 「……したい。仲直りしたいよ。本当に大切な友達だから……その子は昔からずっとボクの近くに居て、でもそんなに親しくはなかった気がするんだ。でもでも、よく晴れた日にその子の元気なとこを見てるとこっちまで元気になれたり、もやもやした気持ちが吹き飛んだりして……それだけでっ、ボクはその子が大好きだって心から思えてたんだ」  映美は、まだカーラの名も知らなかった古き日々のことを思った。自分の影を見る度に、そこに映し出された素敵な誰かさんに憧れた……そんな十余年間のことを。 「やっと……やっとその子に近付けた気がしたのに……やっと、一緒にお喋りしたり、並んで歩いたりできるようになったと思ったのに……また遠くなっちゃうなんて!もう会えないなんて……そんなのボクはやだっ……やなんだよ……!」  胸の前で組んだ手をぎゅっと握りしめ、映美は絞り出すように独白を終えた。清夏はその手の甲を指で軽くさすり、映美を労った。 「そっかぁ……よしよし、頑張った頑張った。友達のことね、そりゃ辛いわ」 「……清夏は、どうすればいいと思う?」  映美が清夏を見上げ、うるうるした目で問いかける。清夏は思わず怯んだ。 「お、おいおい、あたしの助言なんか必要かぁ?……ん~まあ、あたしなら問題の解決はとりあえず置いとくとしても、その友達を諦めることだけはしないかな。そんなに大事なら、ここで離したら絶対に後悔すると思う……なんつってね?」
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