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ハンティングフィールドに再現された校舎内はシンと静まり返り、いやが上にも緊張感が出る。エミカーラは神経を張りつめ、デビルパルダーの足音をひとつたりとも聞き逃さぬよう注意して待った。
(まだ……まだなの……?)
《あっ!待ってください映美さん、何か音が……》
カーラが捉えた音、それは明らかにデビルメカの足音とは異なっていた。何かが激しく熱されて焼きつくような音……しかもどんどん近づいて来る。エミカーラは耳をそばだてて音の源を探った。音がするのは廊下や窓の外ではない。なんとそれは天井からだった。
「……まさか!」
エミカーラが咄嗟にその場から飛び退いた次の瞬間、理科室の天井の一部が発火して焼き破られ、そこから赤いレーザーが降って来た。レーザーはそのまま床に着弾し、天井と同じような穴を穿って階下へと消えて行った。
(な、ななな……!)
《なんてこと……!》
映美とカーラが驚愕していると、天井の穴からデビルパルダーが舞い降りてエミカーラの前に立った。どうやらこいつはエミカーラの誘いにも乗らず、また屋上から通常の経路で校舎に入ることもせず、よりによって校舎そのものをレーザーで垂直方向にぶち抜いて最短距離をやって来たらしい。
(あの光線ってそんなに強かったの!?痛いけど一発一発はそう大した威力じゃないって認識だったんだけど!?)
さっきまで集中砲火をある程度耐えていた映美は戸惑いを隠せない。
《け、計算外でした……カゲトモは私たちが思う以上に頑丈すぎるんです!恐らく敵の光線は本来なら鉄筋コンクリートもわけなく溶解させる威力なのでしょう!》
カーラも動揺している。そこらの遮蔽物ではデビルパルダーの攻撃を全くしのげないことがわかってしまったからだ。
二段構えにまでしていた作戦はあっけなく瓦解。一瞬で頭を真っ白にされたエミカーラが思わず無防備となるのを、デビルパルダーは見逃さなかった。理科室に設置されている8人掛けの作業台のひとつを爪の一撃で根元から抉り取り、それをエミカーラに向けて飛ばして来たのである。質量弾にも等しいその投擲攻撃をエミカーラは正面から受けてしまった。
「ふぎゃんっ!!」
作業台ごと吹っ飛んで窓ガラスを突き破り、エミカーラは中庭に落下した。
(ぐぎぎ……どうしようカーラ、このままじゃ負けちゃうよ)
積み重なったダメージは既に甚大となっており、合身を維持できるかどうかもじきにギリギリの状態になるだろうことを映美は感じ取っていた。この場で合身が解除されれば、敵に一方的に屠られて死、あるのみ。映美が不安を感じ始めた時、カーラが何かを閃いた。
《……ひとつだけ、逆転の策があるかもしれません。私が沈み込んでしまった影の深層……その空間を利用して身を潜めることができれば!》
(えっ、そんなことできるの!?)
映美は戸惑った。何せ自分の影の中にそんなスペースがあることすらさっき知ったばかりなのだから。しかしカーラには確信に近いものがあるようだった。
《いつか、女王様に教えて貰いました。あれは本来、人と共生するシャドーが気配を消して危機をやり過ごすための避難場所なのです。人である映美さんは普通入ることができませんが、私と合身したエミカーラなら短時間は隠れることができるかもしれません》
カーラがそう説明するのを聞いて、映美はひとつ思い当たることがあった。カーラが姿を隠していた時、ティーンはその存在を看破できなかった。ご自慢のスペクトルグラスとやらをもってしてもだ。
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