第3話 オーブはどこに?謎解きの鍵はメイトブレス!

1/6
前へ
/47ページ
次へ

第3話 オーブはどこに?謎解きの鍵はメイトブレス!

 影丸映美という人間は、まごうかたなきのんびり屋だ。あわただしいこと、目まぐるしいことは基本的に嫌がり、心身がリラックスできる場所と体勢を求めては延々そこに居座るナマケモノのような生活を日々送っている。しかし、だからと言って映美は全くのインドア派というわけではない。白昼光とは名ばかりの無機質な蛍光灯の光だけでは気持ちがクサクサすることだってあるし、そんな時には思い切って外に出て気を入れ替えたりしている。要は、本能的に己の健康のためになるよう生きているだけなのだ。  今日にしても、映美はジーンズに足を通してハイキングと洒落込んでいた。空は日差しもいっぱいの春らしい天気で、カーラのシルエットがはっきり見えるので映美はご機嫌そのもの。花見客で賑わう山の中腹を勇んで通り抜け、汗をふきふき山頂まで辿り着いた。 「はーっ、いい景色だねぇ。カーラ見える?」  映美の影に宿っている身ゆえ、カーラは基本地面に貼り付いている。映美は近くの東屋の側に寄ってその柱にカーラを映し、そのシルエットを直立させてあげた。映美の住む佐倉坂市を一望できる絶好の景観に、カーラは思わすため息を漏らす。 『わぁ……素敵な眺めですね。これが映美さんの町……シャドー界の街並みとはやっぱり全然違うんですね。でもとても調和していて、生命の息吹が満ちていて……それは同じです』  シャドー界の王都プルトリアは、少し前にブラーボファミリーの侵攻を受け事実上の壊滅状態に陥ってしまった。ここ人間界からは現状も窺い知れぬ故郷のことを、カーラは折に触れて案じている。それはきっと今も同じ……彼女の物憂げな仕草を見て、映美は胸が騒いだ。 「……大丈夫!きっと、明日は何か手がかりが見つかるよ!」  実は、映美とカーラがハイキングに来たのはただ遊ぶためだけではない。地球の生命を支えるふたつのオーブ……その片割れである「人のオーブ」を探すためでもあったのだ。 『フフッ、ありがとう映美さん』  映美の健気な励ましに、カーラはあたたかく微笑んだ。しかし、それでも今日の成果がゼロなのはいただけない。ブラーボファミリーはシャドー界にある「影のオーブ」を奪取すべく王都を占拠し続けており、人間界にも魔の手を伸ばしつつある。人間界のどこかにある「人のオーブ」を一刻も早く見つけて確保しなければ、地球の存在そのものが危ぶまれるのだ。 『オーブは全ての生命の源であると同時に、それ自体もひとつの生命……ゆえに生命力の溢れる自然を好むと言われています。ここの山などは適格だと思ったのですが、そう上手くはいかないようですね』 「けど、ボクたちの近くにあるのは間違いないんでしょ?」  シャドーメイトは地球を守りオーブを奉る運命の少女。なればこそ、映美とカーラはオーブに近しい場所に元より生まれ落ちている筈。それもまたカーラが予め得ていた知識なのだが、如何せんそれだけでは捜索範囲が広すぎる。現状は厳しいと言わざるを得なかった。 「見つけるのが難しいなら、その分探せばいいだけだよ。地球とカーラのためだもん、ボクだって頑張っちゃうんだから」  額に汗しながらガッツポーズを取る映美。体力は無い方だと言っていた映美がここまで張り切ってくれることが、既にカーラには嬉しかった。 『映美さんは本当に頼もしいです。でも無理は禁物ですよ。今日はここまでにして、しばらくのんびりして行きませんか?』 「えー、まだ大丈夫だよ。下山ついでに別の道通ってさ、もうちょっと探そう?」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加