第4話 エミカーラ脱出せよ!真昼のミュージアムパニック!

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 二本のミサイルは捕まえられてもなお噴射を続け、ぶち当たる対象を求めてあらぶっている。エミカーラは間髪入れずそれら再び宙に放ち、元の持ち主であるデビルケラトプスに向かって思い切り蹴り込んだ。 「カゲトモ・ミサイル返し!!」  杭打ちハンマーの如きオーバーヘッドキックに弾き出され、角ミサイルはがら空きのミサイル発射口へと返って行く。頑強を誇るデビルケラトプスの頭部装甲の中にあって、唯一内部機構が覗く穴……再装填までの間隙が即ちチャンスであることをカーラは見抜いたのだ。 「いっけぇーっ!!」  狙い違わず、ミサイルは二つとも発射口に突き刺さった。たちまちデビルケラトプスの頭の内部で大爆発が起こり、体内に残っているミサイルも合わせて次々と誘爆を繰り返す。頭部装甲が内側からの衝撃で幾度も歪み、比較的脆いボディからはしきりと火花が噴出する。 「ギギギ……ギ、ギギ……」  苦悶のうめき声にも似た不協和音を奏でながら、デビルケラトプスの頭が垂れ落ちる。ホバークラフトもジェットノズルも最早機能していない。果たしてエミカーラは奥の手を使わずして敵を封じることに成功した。今度こそ、フィニッシュを残すのみだ。 「とどめだ!地球の命に仇なす者よ……報いのパンチを受けるがいい!!」  軽やかに地を蹴って、二度の後方宙返り。たっぷりと助走距離を取り、エミカーラは必殺技の体勢に入った。 「カゲトモ・ミーティアインパクト!!」  全力ダッシュで加速をつけ、然る後に斜め前方へジャンプ。カゲトモの超人的な脚力と堅牢な肉体を最大限に利用した、無敵の突撃技が繰り出される。 「突・貫!!」  駄目押しとばかりに体をきりもみ回転。貫通力までプラスして、エミカーラはデビルケラトプスの眉間に鉄拳を叩き込んだ。  頭の中の爆発で歪んだデビルケラトプスの頭部装甲は、今度は外部からの打撃を受けてついに瓦解。殴られた眉間を起点として大きな亀裂が縦一文字に入り、そこからミーティアインパクトの衝撃が体内へと突き抜ける。背中が、腹が、前後の足が、そして尾までもが連鎖するように爆発し、バラバラに崩壊していく。最後は二つに割れた頭部装甲のみを残し、強敵デビルケラトプスは完全に物言わぬスクラップとなった。 「か、勝った……」  エミカーラも既に満身創痍。敵を倒しはしたもののエネルギーは底をつきかけており、立っているのもやっとな程だ。だが、恐ろしいことに戦いはまだ終わっていない。 (ここから元の世界に戻ってティーン・ブラーボをのさなきゃいけないの!?……あーもーめんどくさーーーいっ!!疲れたーーーっ!!)  内面世界で映美が切実な悲鳴を上げる。そのあまりの正直さにカーラは呆れを通り越して少々困惑する。 《駄目ですよ映美さんそんなこと言っちゃ……。まずは、この空間から抜け出す方法を考えましょう。急がないと、折角勝てたのが無意味になってしまいます》  これまでの戦闘では、デビルメカを撃破すると同時にハンティングフィールドが消失し、映美とカーラも現実世界に帰ることができた。しかし、あれは恐らくティーンが撤退する際に任意で解除していたのだろう。だが、今は何としても自力で脱出しなければならない。ここで足止めを食っている間にも、ティーンが人のオーブを見つけてしまうかもしれないのだ。 (そうだね、駄々こねてる場合じゃないや。でも一体どうすれば……ん?ちょっと待ってカーラ、メイトブレスが……)  エミカーラの両腕に装着されたメイトブレスが、ここへ来て再び鳴動を始めた。ふたりが驚いていると、それぞれのブレスに彫り込まれた紋章から光の線が二筋伸び、共にフィールド内の一点を指した。
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