第1話 シャドー界の悲劇!カゲはトモだち?

7/13

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
「如何にも。おれの名はティーン・ブラーボ。宇宙マフィア、ブラーボファミリーの跡取りにして、地球侵略部隊の隊長をも務めている。そう言う君は地球の人間だな。そして後ろに居るのは……シャドーの女!」  ティーン・ブラーボと名乗ったその男が、映美の後ろの壁に映っているカーラを指差した。 「シャドー界から飛び出したエネルギー反応は貴様で間違いないようだな。成程、人間界においては他者に寄生して存在を維持しているわけか。何とも卑しい生命体だ」 「カーラのこと悪く言わないで!」  映美は腕を伸ばしてカーラを庇いながら、ティーン・ブラーボをキッと睨みつけた。 「シャドー界をめちゃくちゃにして、その上カーラまで追って来るって言うの?どうして?どうしてそんなことするの?」 「カーラというのか……そのシャドーの女は。君の大好きなカーラは、女王ペルセフォネからの密命を帯びている可能性があるのでね。我々ブラーボファミリーに反攻するための策か、フフッ、あるいは……人間界にある人のオーブの在り処、といった所か」 「何だって……?」  ティーン・ブラーボの言葉を聞いて、映美はひとつ思い当たった。先程カーラが言うに言えなかったこと……女王様からカーラに託された役目とは…… 「カーラ!」  映美はカーラの方を振り返った。カーラはずっと黙ったままで、切羽詰まったように頻りと呼吸を繰り返している。しかし、ここははっきりさせなければならない。 「カーラ、さっき言ってたことだけどっ」  と、映美が問い質そうとした時であった。突如としてカーラが弾かれるように走りだし、映美を連れて脱兎のごとくその場から逃走した。 「ちょ、ちょ、ちょっとぉ!?何してんのカーラ!」  カーラは答えない。何も言わず全力で走り続け、すごい勢いで映美を引っ張って行く。下手に抵抗すれば派手に転びかねないため、映美は必死に足を前に出してついて行く。 「カーラってばぁ~~~~~~!」  映美の間抜けな叫び声がこだまだけを残し、二人の姿が遠くへ消えた頃……公園に独り残されたティーン・ブラーボはコートのポケットから球体状の機械の端末を取り出し、無造作にスイッチを入れた。 「フン、逃がしはせんよ」  端末から放たれた一筋の電光が空間に直径10メートル程もある穴を穿ち、混沌としたその深淵から、大きな爪を持つ巨体が姿を現した。  ハンティングフィールドの中は静寂の世界だった。今、映美たちが駆け抜ける大通り……そこにある風景や建物自体は現実世界と変わりはない。しかし、それらはまるで時を止めたように静止して物音ひとつ立てないばかりか、行けども行けども人っ子ひとり見当たらない。映美とカーラだけが現実世界から切り出され、この幻影のような空間に閉じ込められてしまっている。このピンク色の空の下では、ふたりは完全に孤立無援なのだ。 「げほっげほっ……カーラ!カーラ待って!止まっ……ちょ待って!息がっ……息できなっ」  映美はもうだいぶ走らされ、日頃の運動不足もあって限界寸前。一方のカーラも流石に息切れし、雑居ビルの谷間に隠れてようやく停止した。 『はー……はー……』  カーラはもう逃げようとはしない。映美はここぞとばかりに尋ねた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加