第2話 いきなり喧嘩!?共同生活はドキドキいっぱい!

1/13
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ

第2話 いきなり喧嘩!?共同生活はドキドキいっぱい!

 人間界でもシャドー界でも、太陽と月は同様に昇るらしい。特にシャドー界では、昼と夜を交互に照らす二つの光をシャドーメイトになぞらえ、地球の恩寵たるその子どもらを古より寿いで来たという。  最初の戦いから一夜明け、映美はカーラからそんな話を聞きながら、ベンチに座ってぽかぽかの陽ざしを堪能していた。朝の並木道は木漏れ日も豊かで、カーラの紫苑色のシルエットがその中にちらちらと見え隠れして美しく映えている。 「素敵なとこなんだね、シャドー界って。一刻も早く平和が戻るように、頑張らなくっちゃ。でも具体的には何をすればいいんだろう?」 『それなのですが……まずシャドー界へ行くことは今のところ不可能だと思います。私がこちらへ来られたのは、肉体が霧散し霊魂だけの存在になったことに加えて、女王様のお力添えあってのことですから』  カーラはシャドー界の空に蓋していた見えない壁を突破して人間界へと辿り着くことができたのだが、その壁の穴は昨日の時点で修復されたことをカーラは既に感じていた。女王ペルセフォネからの念話も一切なく、現状シャドー界との音信は完全に途絶えている状態なのだ。 『……恐らく、ブラーボファミリーの侵攻はいまだ続いていることでしょう。女王様は民を全て霊魂と化して逃がした後、きっとご自身のお力のみで影のオーブを守っておいでです』  理不尽にも踏みにじられた故郷を思うカーラの声は暗い。それがわかるだけに、映美にはあの殺人機械を操る敵がいよいよ許せなかった。 「宇宙マフィア、ブラーボファミリーかぁ……あのティーン・ブラーボって奴、ボク嫌いだよ!そもそも、何だってあいつらはオーブを狙ってるわけ?」  眉を吊り上げ、唇までとんがらせて敵意を表現する映美。カーラの声が少し柔らかくなる。 『オーブは、この地球を生命の楽園たらしめている精霊の力の結晶ですから……ブラーボファミリーはその絶大なエネルギーを利用しようとしているのかもしれませんね。とにかく私たちが今なすべきことは、彼らより先に人のオーブを手に入れることです』  オーブは人間界とシャドー界にひとつずつある。両世界を支えつつ相通じあうこれらふたつの宝玉によって、この世界のバランスは保たれているのだ。 「そっか、こっちの世界にもオーブがあるんだったよね。でも、カーラに教えてもらうまでそんなの聞いたこともなかったなぁ」 『人間界では精霊の存在が忘れられて久しいので、映美さんを含め多くの人が知らないのも無理ありません。でも人間界がある以上人のオーブも確実に存在します。普通の宝石としてどなたかの手に渡っているか、はたまたどこかで人知れず眠っているか……』 「どっちにしても探さなくちゃいけないってことかぁ。よし、早速今日から始めよう!中学生ができることはあんまり無いかもしれないけど、何とかして見つけないとあのいけ好かないティーン・ブラーボに取られちゃうもんね!やるぞ~!」  映美はそう言ってガッツポーズで気合いを入れた。それを受けてカーラは「お~!」と景気よく応じたが……それとは別に一抹の不安を感じて映美にひとつ警告をした。 『あのぉ……映美さん、お~!はいいんですが……時間、大丈夫です?そろそろ学校が始まるんじゃ?』 「ふぎっ!?」  踏まれた猫のような鳴き声と共に映美の体が硬直し、然るのちに顔がどんどん青ざめていく。そう、今日は金曜日、全くの平日である。そして時刻は8時を大きく回ったところ。映美が諦めの境地で口角をひん曲げたその瞬間、始業のチャイムが遠く聞こえて来たのであった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!