林拓海

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林拓海。私の幼稚園からの幼馴染。青丸幼稚園、青丸第二小学校、青丸中学校、青丸高等学校。私と拓海は今年で高校生、10年以上の腐れ縁。拓海は昔から頭一つ抜けて馬鹿だった。幼稚園の頃私が園庭に咲いていた花をあげて4歳ながらにして花言葉まで覚えて告白したら「あかねちゃんありがとう、お腹空いてたんだ」と言ってその場で食べだして、次の日から入院。私がかけ算を9の段まででは飽き足らず、20の段まで覚えてた頃、指が10本しかないという理由で答えが10を越える足し算すらできていなかった。その後地元のほとんどの子が行く青丸中学校に入学すると案の定拓海がいた。毎日のように私のクラスに来て教科書を借りていく。そんな中「あかねと拓海はデキてる」という噂が流れ始める。私はあまり気にしなかった、何回かに一度よだれが付いて返ってくるのを除けば。しかしある日拓海が体操着を忘れ私の教室に来て借りに来たことがあった。体操着を借りに来たのは初めてなので少し驚いたが、いつも体操着を忘れた時に借りてた友達が休みだったらしく、しょうがなく私に借りてきたらしい。「あかね、体操着貸して」という声が教室に響く。ざわざわが無くなり、教室中の視線が私達に注がれる。私は鞄から体操着を取り出す手を止める。そして思わず「体操着なんか貸せるわけないじゃん、私女の子だよ」と拓海を怒鳴りつけ黙って座った。拓海の顔は見れなかった。何かいうかと思ったら何も言わずに立ち去った。チャイムがなり2時間目が始まって早々に校庭から怒る声が聞こえてくる、体育の滝渕先生だ。「林、なんだ。体育着はどうした」「忘れちゃいました」「いつも佐藤に借りてるじゃないか」「今日休みらしくて」「他のやつに借りれば良かっただろ。もういい罰として幅跳びの土でもならしとけ」悪い気持ちしかしなかった。何とか平常を装って筆箱に手を伸ばすと今度は教室中のひそひそ声が聞こえてくる。教室にいる子はさっきの私と拓海のやり取りを知っている。その後体調不良で保健室に行き1週間くらい学校をさぼった。
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