とある一家の物語

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 そこでわたしたちはおばあちゃんの家に住むことになったの。おばあちゃんの家はとても大きくて、とても古かったわ。  どれぐらい古いかっていうと、蔦がからまってるレンガ塀はところどころが崩れているし、大きな鉄でできた門は片っぽが外れてどっかにいっちゃてて、もう方っぽは錆びついてうごかないからいつも開きっぱなし。泥棒だろうが野良犬だろうがどこからでも自由に入ることができるわ。  広いお庭は草がぼうぼうに生えててそこらじゅうに蜘蛛とか蟻とか蛾とかがいるの。それに水が涸れてしまったボロボロの噴水とか、誰が造ったのかわからない気味の悪い銅像なんかもあるわ。  家中の窓ガラスは割れているし、テラスの窓なんて開けられないように板を何枚も打ち付けてあるのよ。  それでわたし、引っ越した日にパパに言ったの。 「パパ、わたしこんなお化けのでそうな家には住みたくない」って。  そしたらパパが言ったの。 「お化けだって?何を言っているんだい、エイプリル。おばあちゃんに聞いたんだが、この家には悪魔が住んでるらしいぞ」  それからパパはおばあちゃんから聞いた話をしてくれたの。  昔からこの家には、このあたりの有力者の一族が代々暮らしていたんだって。だけどその家の人が村に住む魔女にイジワルなことをしたばっかりに、その魔女に呪いをかけられてしまったらしいの。  それで、その一家の長男が悪魔に取り憑かれてしまい、そのあげく猟銃や鉈、手斧を使って両親と4人の弟と妹を皆殺しにしてしまったそうよ。   それで最後に「俺がやったんじゃない!俺の頭の中の悪魔がやったんだ!」って言い残して、自分の頭を拳銃で撃ち抜いて死んじゃったんだって。   それ以来この家は30年近く誰も住んでいないあばら家だったの。あばら家っていうか廃墟よね。  で、わたしたちが越してくるからって、おばあちゃんがこの廃墟を二束三文で買い取ってみんなで住むことになったってわけ。 「パパはお化け屋敷に住むことが子供の頃からの夢だったんだ。エイプリルだって大きなお屋敷に住みたいって言っていたじゃないか。これでパパとエイプリルの夢が同時にかなったね」  パパはのん気にそう言うと、大きな声で笑って嬉しそうに書斎に入っていったの。
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