本当は
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本当は

「ん……ここはどこだ?」 気がつくと俺は一人暗闇の中に立っていた。 確か、俺は屋上から飛び降りて……とすると、ここは死後の世界? 俺が考えていると、突然、後ろから女の子のような声が聞こえてきた。 「ん~、正解でもあるし、不正解でもあるな」 コツ、コツ、コツ、と足音はどんどん俺に近づいてくる。 「やあ、初めまして。僕はアプロヴィース。女神だよ」 その足音の正体は、女の子ではなく男だった。しかも、自分を女神と名乗っている。 「突然こんなところで目が覚めたら驚くよね」 そう言ってアプロヴィースという女神は頭を下げる。 あ、頭モフモフそう……と、思っていたら勢いよく俺の額にデコピンをしてきた。 「痛っ!」 な、なにするんだいきなり……! 俺が睨むと、アプロヴィースはニコニコとした様子で無言の圧力を出している。 「なーんて言うとでも思った?」 「はぁ!?」 意味が分からない。なんで俺はこんなことをされているんだ? 「意味が分からない? どうして?」 絵に描いたような笑顔で言ってくるから余計に気味が悪い。というか、俺、意味が分からないって口に出した? アプロヴィースの顔を見ると、笑顔で細められていた目が薄く開き、俺を見た。 「…………」 その目は相手を見下ろしたような、軽蔑したような、そんな目だ。先程の笑顔も怖かったが今の目の方が恐怖を感じる。その目が本当に人間ではないということを物語っていた。     『 ヤ バ い 』 本能的に感じとった。 この人はヤバい人だと。 「……っ!」 アプロヴィースに恐怖を感じて一歩後ろに下がった。 すると、アプロヴィースも一歩前に進んだ。 「何をそんなに怖がっているの?」 一歩 逃げなきゃ 「あぁ、自分が何故こんなところにいるのかが気になっているの?」 一歩 背中が冷たい 「それとも、自分の心が読まれているのに気がついたとか?最初から読んでいたよ」 一歩 何故か目を逸らせない 「それと、何故こんなところにいるのかって?」 一歩 「あ……」 背中が壁にあたった。 「それはね……」 強い力で左腕を掴まれる。      『もう、逃げられない』 アプロヴィースの笑顔が完全に消えた。 その顔は、お化けよりも、鬼よりも、悪魔よりも酷く残酷な顔をしている。 「――自分の胸に聞いてみなよ」 パチンッ 誰かが指を鳴らす音が聞こえた。 「アプロヴィース!!」 男性の声が聞こえて、その瞬間にアプロヴィースの姿が消えた。 「はぁ……はぁ……」 冷や汗が止まらない。 なんだったんだ、今のは。 頭にアプロヴィースの言葉が何度も再生される。 『自分の胸に聞いてみなよ』 つまり、何故こんなところにいるのかは自分が一番知っているだろうということ。 そんなの、分かってる。 俺が、俺が…… 「――自殺をしたからではありませんよ」 「っ!」 また、暗闇から人が現れた。きっとこの人も人ではないのだろう。
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