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「すいませーん、どなたか、手伝ってもらえないでしょうか」
毎朝利用する駅で、時々、車いす姿の男性が、こう周囲に大声で呼び掛けている場面を、目の当りにする。その駅は階段を上った先が改札となるので、車いすを利用している方々にとっては、非常に不便な造りとなっている。と同時に、バリアフリー化が浸透した現在、その駅にも既にエレベーターが設置されているので、何故、それを使わないのだろうと、ふと、思ってみたりもするのである。
その朝も、男性は呼び掛けていた。たまたま近くを歩いていたので、成り行きで、助っ人4人組の中の、左後方を担当する一員になろうと、自らすすんで腕を伸ばした時である。その男性が、自分に向かって、
「あっ、ごめんなさい」
「・・・えっ」
「あの、彼に、やらせてあげたいんです」
すると男性は、階段の隅、壁際で、遠巻きにこっちの様子を眺めていた、ボストンバッグを肩に背負った、高校生と思われる少年に声をかけた。
「そこの君、こっちに来て、手伝ってくれないかな」
少年は、自らの鼻っ柱を指さし、それは自分のことかと言いたげな、態度を示している。
「そう、君だ、お願いしたい」
自分で間違いないと確認できた少年は、すぐさまダッシュで駆け寄ってきた。そして、自分と入れ替わる様にして、「せーの」と、男性の乗った車いすを持ち上げ、階段を上り始めたまでは良かったが、その、肩に背負ったボストンバッグが、直しても、直しても、その都度肩からずり落ちてきてしまい、何とも見ていて気分が落ち着かない。止むを得ず、彼が善き行いに専念できるよう、自分が彼のボストンバッグを、代わりに改札口まで運んであげることにした。
そんな縁から、ホームで電車を待つ間、その少年と話す機会を得た。
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