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猫かなぁ。猫にしては、少し小さい気も……。
その時、中の〈それ〉が体の向きを変え、こちら側の格子に顔を近づける。その一瞬の間に、どこか見覚えのあるくりくりした目としっかり目が合った──ああ、やっぱり!
猫だったんだ。まだ子猫だなぁ、可愛い。
私は、〈それ〉の正体が分かったことで、ささやかな満足感に浸っていた。
そうこうしている間にも、電車は四つ目の駅に辿り着いた。そして、男はキャリーケースを携え、降車した。扉が閉まり、男の姿が視界から消える。車両には、再び私たちだけが取り残された。電車がゆっくりと動き出す。私たちは、顔を見合わせた。
「ねぇ、さっきの見た?」
「見た!可愛かったよね。」
私も、両隣の二人の会話に応えようとする。
「子猫だったね、可愛かったなぁ。」
すると、「えーー!!」と両脇から驚嘆の声が沸き起こった。予想外の反応に、呆気に取られる。
「いやいやいや!あれは絶対、ウサギだったって!……長い耳、ちゃんと見えたもん。松本は、目がおかしかったんじゃないの。」
右の竹田がそう言ったかと思うと……。
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