カナラズ カエル

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──嫌に湿っぽい空気を鼻腔が捉え、目を覚ました。枕元に何かがある。触れると、ザラザラとしていて、冷たい。 (土……濡れた土だわ……。) 見るとそれは、筋となって床の上を続いており、部屋の一角に向かっていた。あそこにあるのは──本棚だ。彼女は、震える身体を引きずり、その上を確認しようと、歩み寄る。すると、そこには── 『うふふっ。』 土に塗れた人形が、唇の形を歪め、邪悪な笑い声を漏らしていた。 ──そんなことがあってから、長い長い年月が流れた。気の遠くなるような、長い年月が。その間、人類は、些細な文化・信条の違いから、互いに衝突を繰り返し、滅ぼし合い、現在は、『人類皆隣人(ワールド ネイバーズ)』のスローガンのもと、上部だけの結託に落ち着いている。地球上の人口は、かつての100分の一にも満たない程に減少していた。しかし、残り僅かばかりのこの惑星(ホシ)の資源は、そんな彼らに充分な生活を保証するのにも、不十分だ。 資源を獲得する目的のもと、幾度となく探査員が宇宙空間に送り出された。しかし、今のところ、その成果はない。そもそも、無事に地球に還れた者すら少なかった。 ──そして、また一人、憐れな若者が、その過酷な任務を負わされ、宇宙空間へと送り出されようとしている。     
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