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新発見
「はい。これ、前に言ってたお土産です。つまらないものですが。」
「わぁ! ありがとうございます。わざわざ届けてくださって、本当に。」
私は、紙袋を受け取ると、初めて我が家を訪ねてくれた彼女にささやかな疑問を投げかける。
「それにしても、よく迷わずに来られましたね。この辺りは似たような家ばかりで、分かりにくかったでしょう。」
「……実はさっき少し迷っちゃって。それで、ご近所の方が教えてくださったんです。『サトウさんの家は、あの角の──庭先にタヌキの置物がある家だよ。』って。お陰で、すぐに分かりました。」
……タヌキ? 何のこと?
心当たりの全くなかった私は、ただ、彼女に指さされるがままに視線を移す。──すると、其処には、確かにあったのだ。高さ一メートル近くはありそうな、信楽のタヌキの置物が。おそらく、前の住人の時からあったのだろう──年季の入ったそれは、全体的に色が落ち、今にも消えそうな薄い黄土色をしている。庭の木々にすっかり溶け込んでおり、この瞬間まで、その存在に気が付かなかった。
彼女を見送ってから、私はその置物をまじまじと見つめる。
──それにしても、今までよく気が付かなかったな。こんなに大きいのに。
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