鵺を飼う

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鵺を飼う

学校での用事が全て終わり、私はいつもの友人二人とともに下校していた。 学校の最寄り駅から、電車に乗り込む。帰宅者で混み合う時間にはまだ早い。ただでさえ利用客の少ないローカル線のこの車両はガラガラで、私たちの貸切状態だ。私たち3人は、横並びに座ると、引き続きくだらない雑談に興じる。 二つ目の駅で停車した時、車両に一人の男が乗り込んできた。男は、キャリーケースを手に下げている。おそらく、ペット等の小動物の移動に用いるものだ。男は、私たちの正面の席まで歩み寄ると、それを床に置き、自身も着席した。 私たちは、少し声を落とし、会話を続ける。しかし、私たちの興味は密かに、手前のキャリーケースへと注がれていた。各々が会話の合間にチラチラと下方に視線を向けていた。勿論、私も。 ──何が居るのだろう。 何か生き物が入っているには違いない。奥の方で、茶色っぽいまだら模様の毛の生えた小さな塊が、ピクピクと体を震わせている。しかし、キャリーケースの隙間は狭く、中が充分には見えない。それに、中の〈それ〉はおそらく背を向けているのだ。 暫く眺めていたが、私は未だ〈それ〉の正体を掴みきれずにいた。 ──何なのだろう。     
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