夜の道

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夜の道

 雨が降っている。  本来は綺麗だったハズの桜道に。  無惨な程の激しく降り頻るその雨は、ようやく咲いた桜を容赦なく散らしていく。散って落ちた桜が地面いっぱいに張り付いていた。気を抜いてしまうと、花弁を踏み、滑って転んでしまいそうだった。そしてインターネットで見れる夜桜はもうどこにもない。もし今、雨なんか降っていなかったら、きっと綺麗な夜桜が見れていただろうに。 「……ねぇ、もしかして幹男(みきお)くん?」  だからといって足を止めるわけにはいかない。足の裏に力を入れ、なるべく花弁が落ちていないところを意識して通るようにする。 「あ、そうだ!絶対幹男くんだ!」  そんな事に気を取られていた所為かもしれない。  俺は、人生史上、最も会いたくない人間に出会ってしまった。 「……良田(よしだ)さん……」  足を止める。  端的な印象は可愛いといえば伝わるだろう。     
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